研究課題/領域番号 |
25780045
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
渡邊 一弘 専修大学, 法学部, 准教授 (90449108)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 量刑 / 死刑 / 無期懲役 / 裁判員制度 |
研究概要 |
平成25年度は、裁判員制度導入による従来の職業裁判官による量刑判断からの変化についての指摘や、裁判員制度施行後、ある程度判例の集積が認められるようになったことを受け、裁判員裁判における量刑傾向の客観化と従来の量刑傾向からの変化の有無の確認を行うことを目的とし、判例データベース「LEX/DB」から入手した裁判員裁判において審理された殺人罪判決を分析対象とし、有期懲役刑の刑期の基準について多変量解析の手法を用いた実証的研究に取り組んだ。また、裁判員裁判における死刑と無期懲役の適用基準について、従来の裁判官裁判における死刑の適用基準を分析した識別表を用い、裁判官裁判からの量刑傾向の変化の確認に取り組んだ。 本年度に取り組んだ研究からは、裁判員裁判における殺人罪に対する有期懲役刑判決について数量化理論第I類の手法により刑期の長さに影響を及ぼす要因の分析を行い、識別力の強い要因として、1位:殺害被害者数、2位:殺害手段、3位:共犯関係、4位:犯行時年齢、5位:動機、という分析結果を確認した。このほか、若年犯罪者であることについての量刑上の評価に関し、裁判員裁判施行前後での傾向変化の兆しを確認した。また、家庭内での育児や介護疲れ等に関わる要因については、裁判員裁判においては減軽的に考慮されていることを確認した。また、有期懲役刑の刑期の選択に際しての検察官求刑と宣告刑の関係については、従来の裁判官裁判において指摘されていた「求刑の八掛け」という量刑相場と同様の傾向が維持されていることを確認した。 死刑の適用基準については、量的観点から見れば、現時点では、急激な判断傾向の変化が見られるとは言えない状況であること、そして死刑と無期懲役の選択が迫られる場面においても、検察官求刑の影響力の大きさがうかがえることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定を変更し、平成25年度には、調査票作成作業に加え、①裁判員制度施行以降の殺人罪についての有期懲役刑の刑期の基準についての実証的研究、および②裁判員裁判施行前後の死刑の適用基準の推移に関する研究に取り組んだ。 研究計画全体における個別的分析については取り組む順番の変更はあったが、予定している研究課題についての分析は、順調に進められている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、平成25年に取り組んだ死刑の適用基準に関する研究を引き継ぎ、裁判員制度施行以降の死刑判決と無期懲役判決を収集し、調査票に記入し、分析用のデータベースの作成に取り組むことを主たる研究課題とする。 平成27年度は、①「無期懲役と長期有期懲役の量刑基準」の客観化と②無期懲役と長期有期懲役の適用基準に影響を及ぼす量刑要因の分析に取り組む。分析対象とする判決の収集については、26年度の研究との対応を考慮し、永山判決以降に確定した懲役15年以上の有期懲役判決とし、「LEX-DB」などの判例データベースを用いて調査・収集を行う。27年度は、26年度に収集した「無期懲役判決」群と27年度に収集した「長期有期懲役判決」群の適用基準に強い影響力を示す量刑要因の確認および数量化理論第II類を用いたシンプルな識別表の作成とロジスティック回帰分析を用いたの識別モデルの作成に取り組む。ここでの分析成果と平成26年度の研究成果の比較を通じ、懲役刑における無期懲役の刑罰機能の分析を試みる。 平成28年度には、これまでの研究成果をふまえ、本研究全体の総括を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年4月からの所属大学異動に伴い、当初予定していた移動旅費を大幅に節約することが可能となった。 また、申請段階においては、資料収集作業について、東京在住の大学院生などに作業補助を依頼する予定であったが、所属大学異動により、申請者自らが作業を行うことが可能となり、この分の経費も節約できたため、平成25年度については、当初予定より支出が減り、残額分を翌年度への繰り越し金とすることとなった。 平成25年度からの繰り越し金については、平成25年度の研究の取り組みを経て、所属大学異動に伴い、利用できる統計機材の環境に変化が生じ、必要備品等の整備に予想以上の支出が必要と判明したため、情報処理機材購入のための費用として活用する予定である。
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