近年検討中の新たな捜査手法の1つである秘密捜査に関して,捜査対象者に対して,捜査官の意図や身分を伝えずに,その自己負罪的供述を獲得するのであって,供述獲得時に対象者に対する供述拒否権の告知を行わない点で問題がある。本研究は,ドイツの刑事手続を比較法研究対象とし,捜査機関が対象者に対して供述拒否権の告知を行わなければならない時点及びその判断基準は,捜査機関の意思活動の存在が決定的要素なのではなく,対象者を自己負罪の危険から保護するという法の要請に基づいて,目的論的に決定すべきであり,それゆえ,いわゆる重要参考人に対する取調べにおいては告知が必要であることを明らかにした。
|