研究課題/領域番号 |
25780052
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
深町 晋也 立教大学, 法務研究科, 教授 (00335572)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 緊急避難論 / DV反撃殺人事例 / 正当化的緊急避難 / 免責的緊急避難 / 家庭内暴力 |
研究実績の概要 |
1.平成26年度は、研究計画に従って、スイス・チューリヒ大学の刑事法研究所(所長:Christian Schwarzenegger教授)に出張し、スイスにおける緊急避難論の全体的な構造や、DV反撃殺人事例を巡るスイス連邦最高裁判所の諸判例(特に、1995年判決及び1999年判決)についての精緻な分析を行うことができた。また、一定の精神状況下でなされた殺人について刑を減軽する規定であるスイス刑法113条の構造を研究することで、前述のDV反撃殺人事例を巡るスイス法のあり方について、より深く検討を行い、かつ、我が国における重要な示唆を得ることができた。ドイツ語の文献のみならず、フランス語の文献についても渉猟することで、スイスにおけるこれらの議論についての多角的な検討が可能となった。 2.かかるスイス法についての多角的な研究と、平成25年度に進めていたドイツ法についての研究とを併せて、平成26年度にはDV反撃殺人と緊急避難を巡る論文を最終的に完成させ、公刊することができた。本論文は、従来のわが国には欠如していたDV反撃殺人事例という視角を設定しつつ、正当防衛論ではなく緊急避難論による解決を提唱するものであり、我が国の議論状況に与える影響力は大きなものと考えられる。 3.また、平成26年度は、研究計画に従って、オーストリア刑法における緊急避難論についても、必要な諸文献、特に判例の動向や諸学説に関する文献を収集して研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.一方で、本来は平成27年度に予定していた本研究に関する論文執筆の一部を前倒しし、平成26年度に公刊することができた。ドイツ法、スイス法及びアメリカ法を広く参照しつつ、我が国における緊急避難論について示唆を与える論文を公刊したことは、本研究の目的の一部を既に達成したものと言える。 2.他方で、平成26年度に予定していたオーストリア・リンツ大学への出張については、現地の受け入れ態勢を確保することができなかったために、平成27年度に回さざるを得なかった。この点において、なお平成26年度の目的が達成されたとは言いがたい。
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今後の研究の推進方策 |
1.平成27年度は、オーストリア・ウィーン大学の刑事法研究所(所長:Susannne Reindl-Krauskopf教授)への出張を行い、オーストリア刑法における緊急避難論についての研究、文献収集及び意見交換を行う予定である。 2.また、本来はオーストリア刑法における緊急避難論も研究した上で、多角的な比較法的考察に基づいた緊急避難論に関する論文を公刊することを計画しており、平成27年度においては、平成26年度に公刊した論文に引き続いて、オーストリア刑法における緊急避難論に関する論文をも公刊する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の助成金のうち、オーストリア出張に想定していた分についての支出がなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、オーストリア・ウィーン大学への10日間ほどの出張を行い、外国旅費を支出する予定である。また、オーストリア刑法に関する文献の収集を更に進めるために設備備品費を支出する。更に、こうした研究における成果を北大刑事法研究会で報告するために、国内旅費を支出する。
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