我が国の緊急避難を巡る議論においては、従来、主としてその正当化根拠を巡る理論的な問題が中心に採り上げられて来たが、本研究では、広く比較法的な観点を考慮しつつ、緊急避難論の現実的な適用場面を想定し、その要件解釈及び事例解決を行った。 特に、本研究においては、家庭内暴力の被害者がその加害者に対して反撃するうちに、その加害者を殺害する事例(DV反撃殺人事例)について、比較法的に見て、様々な国において同様の事例が問題となっていることを示した。そして、DV反撃殺人事例の解決に対するアプローチが複数あることを論じつつ、我が国において合理的な解決方法としての緊急避難アプローチを提唱した。
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