研究課題/領域番号 |
25780053
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
中島 洋樹 関西大学, 法務研究科, 准教授 (60403797)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際捜査共助 / 国際司法共助 / 刑事司法の国際共助 |
研究概要 |
平成25年度においては、国外で収集・作成された証拠に関する (1) 日本の判例理論を再確認し、(2) 違法収集証拠排除法則の適用における理論上の問題点に関する考察および (3)いわゆる不公正手続証拠排除法則の理論的検討と本問題に対する適用可能性について中心に資料調査と考察を行った。 司法共助ないし捜査共助に基づいて外国で作成された調書等の書面に関するわが国の裁判例を具に確認、整理したところ、①その多くは信用性の問題に言及されるだけである、②主に当該国の手続保障がわが国と比して十全でないことを根拠に弁護人の側から違法収集証拠の排除を申し立てるケースも見られるが、排除法則の対象となるわが国捜査機関の主体的活動がせいぜい共助要請手続に限定され、要請を受けて実際に行われた証拠収集手続には及ばないとされる、③刑訴法全体の精神に照らして事実認定の証拠とすることの許容性を問題とするケースも現れ、とりわけ平成7年のロッキード事件大法廷判決が手がかりになりそうであるが、排除の理論的根拠についてさらなる検討を要する。その排除根拠について諸説を整理すると、i)法の欠缺への対応、ii)前記i)に加え当該制度への消極的判断をも含む、iii)被告人の証人審問権保障、iv)違法収集証拠排除法則に包摂される一類型、v)適正手続の観点からの新しい許容性に関する法理等が挙げられる。 以上のことから、違法収集証拠排除法則の適用に関しては、上述のように捜査主体を形式的に画することにより適用の困難が見受けられるが、むしろ、他国の手続を自国の手続に照らして「違法」と評価しうるかという根本的かつ重要な問題が残る。それゆえ。証拠能力判断枠組みを構成するに際して、ロッキード大法廷判決にみられるように、収集手続の適法性判断に入ることなく「証拠の許容性」判断を直截に行うという方向性が示される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
わが国の裁判例および学説の整理に関しては概ね計画通りに進捗しているが、外国資料の調査の進捗状況が芳しくない。すなわち、研究目的のうちわが国の既存の証拠能力判断に関する構造の確認の段階にとどまり、比較法的な考察の段階に立ち入れていない。法科大学院教育の負担増に加え、当該年度を通じて体調が芳しくなかったことが遅延の原因と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進の方策として、遅延気味である外国文献の調査を重点的に行うことにより、本研究課題の比較法的な考察を進める。また、中間報告的な意味で各研究会において発表の機会を得て、他の専門家から意見を求める予定である。遅くとも平成26年度末の研究期間終了までに論文執筆の目処を立てる。
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