本研究では、契約法における整合性原理に関し、その内容として、①契約当事者の行動が一貫性を欠いていないこと、②契約規範における各部分が相互に矛盾した内容を含んだものとなっていないことという、2種類の下位原理によって特徴付けた上で、その意義および機能について検討を実施した。特に、契約規範がその契約内部で相互に整合性を保っていることに対する要請は、典型契約冒頭規定を中核とした典型契約規定の構造を支えるとともに、近時の債権法改正にかかる消費貸借・使用貸借・寄託における要物性の要請の見直しに際しても、それに代替する規律(目的物の受取前解除権など)のあり方を方向付けるべきものであることが明らかとなった。
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