平成27年度においては、平成25年度に行われた人および家族が関わる民事責任法上の個別問題の検討、平成26年度に行われた民事責任法全体および人の法や家族の法全体からの検討を踏まえ、従来の議論の中に内在する理論的および実際的問題を明らかにする作業と、人や家族との関連でこれまで生じ、また、将来的に生ずる可能性がある問題へとアプローチするための課題・視点・分析手段を提示するための基礎的な検討を行った。また、とりわけ民事責任法と家族が関わる問題については、家族の中身という視点(より具体的に言えば、1.民事責任法上の問題が家族との関連で把握されるべき内容を持つとして、そこでの家族という枠の中にどのような者が含まれるのかという視点、2.各人は人格と主体性を持つ存在であるところ、民事責任法が家族と関わる場面で、こうした個人の像が家族との関係でどのような変容を受けているのかという視点、3.典型的な家族の像というものが想定されるとして各家族はそこから自律的でありうるのか、各家族は当該家族以外の存在からの介入を受けるのかという視点)および民事責任法の枠組という視点(より具体的に言えば、個々の議論が民事責任法の構造に適合しているのかという視点、個々の議論が民事責任法の目的や本質と整合的であるのかという視点、個々の議論が民事責任法の枠内で考慮されるべき価値に十分配慮することができているのかという視点)から、家族の保護に関わる問題(ある家族に属する者が家族外の者に対して家族と関連を持つ形で被った損害の賠償を請求する場面)と家族の責任に関わる問題(ある家族に属する者が当該家族に属する者または家族外の者に対して家族との関連で生じた損害について責任を負う場面)を包括的に分析した。
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