本研究は、詐害的会社分割の局面における分割会社の残存債権者の保護の問題について、会社法・民法・倒産法の交錯に着目しながらドイツ法を比較対象として分析するというものであった。平成27年度は、本研究の最終年度として、平成25年、26年度の研究を踏まえて、「詐害」の意味や各法の交錯について総括的な研究を行った。この成果として、(1)「ドイツ法における『詐害』の意義ー組織再編法制の検討」(大分大学経済論集、2016年5月10日投稿)、(2)「新設分割に対する破産法上の否認権の行使」(大分大学経済論集、第67巻第6号(2016年3月)がある。 (1)では、ドイツ組織再編法は、会社分割における債権者保護について濫用的会社分割を想定して規定しているが、濫用的ないし詐害の意味については明らかにしていないことから、債権者取消権法および倒産法の諸規定から、組織再編法制が整備された時期の前後に分けて、詐害の意味の分析を試みた。(2)では、いわゆる濫用的会社分割に対する破産法上の否認権の行使について、詐害性の判断基準等を中心に、判例研究を行った。
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