研究課題/領域番号 |
25780072
|
研究機関 | 札幌学院大学 |
研究代表者 |
佐々木 健 札幌学院大学, 法学部, 准教授 (00556764)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 国外制度運用調査(ドイツ) / 論文公表 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
平成26年度においては、ドイツ法における手続補佐人制度の運用実態の把握について努めた。平成25年度の研究により把握した国内法制における制度運用上の検討課題をもとに、ドイツにおける手続補佐人制度との比較から制度運用面について評価を行った。この内容については、具体的成果として、論文「ドイツにおける子の意思の尊重-家庭裁判所と少年局、そして手続補佐人の役割」を執筆し、二宮周平・渡辺惺之(編)『離婚紛争の合意による解決と子の意思の尊重』(日本加除出版 2014)320頁以下に掲載することができた。 また、平成26年度の研究計画の核でもあるドイツ法制度の運用実態調査については、ミュンヘンをはじめとしてドイツ国内における運用状況につき、研究者・裁判官・手続補佐人等に直接にヒアリング調査をすることで、選任事案の傾向や地域間の連携、専門養成の体制等について知ることができた。なお、実地調査の準備として、手続代理人の活動の実情に詳しい弁護士のもとで、手続代理人マニュアルの内容も踏まえながら、昨年からの日本法制の運用状況の確認を兼ねてヒアリング調査を行った。 ドイツ調査においては、ドイツ法制度の制定経緯上、重要な位置づけとなるBadBall会議を踏まえ、同会議が開かれたEv.Akademie Bad Ballがいかなる性質の機関であるか、調査も行った。これらの調査結果については、論文としてまとめ、公表すべく、現在、執筆中である。 なお、今年度は、研究テーマである家事事件手続における子の意思尊重原理に関して、面会交流事案をもとに、函館家裁・旭川家裁において講演を行う機会を得ることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究内容は、大別すると、①ドイツ手続補佐人制度の運用状況に関する実地調査、②オーストリア法制度における子ども補佐人制度の概要の把握、③次年度予定のオーストリア法制度の調査研究の準備として、学説・判例分析の3点であった。 ①については、ドイツに赴き、ミュンヘン・ハイデルベルク等において、研究者、裁判官、手続補佐人等から現在の運用状況及び課題につきヒアリング調査を行い、また、日本法制の運用状況に対する指摘を受けることができたため、当初の目的をおよそ達成することができたと評価できる。 ②については、オーストリア非訟事件手続法における「子ども補佐人」制度の概要及び非訟事件手続法の改正と「子ども補佐人法」制定経緯の概略について把握しており、この点についても当初の目的をおよそ達成できていると評価できる。 ③については、オーストリア法制度の各論点(子の年齢に応じた意思の把握と意思尊重原理に基づく裁判所への反映方法の具体的内容・子ども補佐人の専門養成システム・費用負担体系等)の詳細に関する詳細な分析はまだ十分ではないが、調査予定先及び日本法制・ドイツ法制との比較から調査すべき内容についてはおよそ整理することができている。
|
今後の研究の推進方策 |
事業期間の最後の年度となる平成27年度においては、以下3点につき研究を順次進めていく。つまり、①オーストリア法における「子ども補佐人」制度につき、現地ヒアリング調査に基づく運用実態の解明、②日本・ドイツ・オーストリアそれぞれの法制度の運用実態を踏まえた、日本の手続代理人制度への具体的示唆の抽出、③これまでの研究結果につき論文等を通じて公表するという流れとなる。 平成26年度の研究計画においては、最終年度におけるオーストリア法制の調査に向けた法制度の概要及び制定経緯の把握を掲げていたが、これについては、およそ既に把握できている。日本法・ドイツ法でも検討を行った、裁判所における子の意思の具体的反映方法・専門養成とそれを支える諸機関の連携・費用負担問題につき、オーストリア法制における実態がいかなるものか、現地ヒアリング調査を通じて究明することに努めるものとする。その上で、日独墺それぞれの運用実態を踏まえた制度分析を行い、日本法における「手続代理人」制度が子の意思尊重原理に基づくものとして、より適切で積極的な運用がなされるための示唆を抽出し、研究結果を公表する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ドイツ実態調査の日程調整にあたり、調査先機関及び通訳(ドイツ法制の内容等を知り、過去に別の調査で依頼実績のある者である)との連絡の上で調整を行ったが難航し、年度末でのドイツ訪問(3月22日-3月29日)となり、当初の調査予定から異なることとなった。ドイツ調査においては各地域における制度運用上の差異を確認する必要性から、当初、ドイツ国内旅費を高く計上していたが、上述の事情により、調査日程が短くなり、ドイツ南部の調査にとどまったこと、所属大学の旅費規程上清算期限に間に合わず、ドイツ国内旅費につき科研費執行ができなかったことから、当初の予算に対して差額が生じてしまった。 また、ドイツ手続補佐人制度に関する専門文献の調査については、学内図書館等に配架されている家事事件手続法コンメンタール及び法律洋雑誌掲載内容を分析することが中心となったため、物品購入計画と使用額が異なるに至った。
|
次年度使用額の使用計画 |
とりわけ、平成27年度におけるオーストリア法制の実態調査のために必要な旅費・人件費・謝金を中心に、使用を計画している。その他、ドイツ南部での実態調査が中心となったこともあり、ベルリン等北部における調査を踏まえた上で、オーストリアへの調査移動も必要と考えている。なお、細かな内容に関するヒアリング調査のために、今回ドイツ調査で依頼した通訳に現地調査の補助を依頼する予定であり、当該人件費・謝金として使用することも考えている。
|