研究課題/領域番号 |
25780074
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
大澤 逸平 専修大学, 法務研究科, 講師 (40580387)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 民法 / 不法行為法 / フランス法 / 賠償 |
研究概要 |
本年度は、主にフランス不法行為法における「賠償」概念の探求に取り組んだ。なかでも、わが国において彼の地の「原則」であると紹介されることの多い、「現実賠償」概念について、その意義と内実をめぐる議論を検討し、その成果は、大澤逸平「フランス不法行為法における現実賠償概念」専修ロージャーナル9号 に掲載することが出来た。 同論文においては、事実の回復でしかまかないえない「損害」の存在が意識されていること、「賠償」概念が多角的に被害者・加害者・一般利益の観点から多角的に把握しうること(しかしながら多くの論者においてこの点が十分に共有されず、議論が混乱していること)、そして、「賠償」の最終目的を「いかなる視点・立場」からの「いかなる状態」とみるべきかという点に関する理解によって、「現実賠償」の理論的位置づけや内実が異なることが示された。 このような彼の地の法状況・議論状況を整理・分析することは、日本法における原則とされる「金銭賠償原則」や、その射程を明らかにするための一助となる。すなわち、一定の状態を実現するものとしての「賠償」作用のうち、「金銭賠償」原則がどの部分を射程としているのか、という問題である。また、そのように賠償作用の内実を解明することは、金銭賠償原則の具体的な適用のあり方を再検討するものともなり得る。 もっとも、同論文においては、時間の制約もあり、あくまでフランス法の議論を整理・検討し、そこから導かれる視点を抽出したに過ぎない。日本法へのフィードバックは次年度以降の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画したとおり、フランスにおける「現実賠償」概念をキーとしつつ初年度の研究を進めることが出来、その成果として論文を一編公表することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、今年度の総論的(あるいはやや抽象的)検討を踏まえつつ、各論的検討を進めていきたい。とりわけ、中古物の毀損のケースでは、取引価格による賠償と、実際にまかなわれる「損害」とが乖離する場面が多いと考えられ、具体的な規律と、それを支える理論的考察を深めていく必要性が大きいと考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画当初に支出を見込んでいた人件費が不要になったため。 物品費(書籍購入費)として使用する予定である。
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