研究課題/領域番号 |
25780076
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
深川 裕佳 東洋大学, 法学部, 准教授 (10424780)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 決済・弁済 / 金銭債務 / 債権の消滅 / ファクタリング |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,近年の電子的な決済手段の発達に鑑みて,現行民法の起草者の予定していなかった新たな支払手段を利用した弁済(たとえば,インターネットを利用した振込みや電子マネーによる支払いなど)について,既存の理論では説明が不十分な点はどこか,不十分な点があるとすれば,どのような新しい理論や立法が必要とされているのかという問題を検討するものである。 平成26年度は,まず,上記課題について,いずれもEU決済サービス指令を国内法化しているイギリスとフランスについて比較的な視点を得るために検討を行った。まず,イギリスに赴いて市中で普及している決済手段について知見を得ると共に,マネー及び金融に関する文献資料を収集して分析した。また,フランスについても,すでに入手している文献資料を分析すると共に,新しく公表された文献資料のリストを作成して,さらにその研究を発展させるための準備を行った。これらの検討の成果は,平成27年度中に論文として公表することを予定している。 つぎに,上記課題に関連する問題として,金融実務に影響を与えるものと評価されている近年の最高裁判例を取り上げ(最判平24・5・28民集66巻7号3123頁),「保証ファクタリング」と呼ばれる取引について検討した。このような取引は従来,民法ではその意義が十分に検討されてこなかったところ,本研究を通じて,主に中小企業が負担する売掛代金債権の決済上のリスクを移転するファクタリング取引であることを明らかにした。また,債権法改正において現行民法からの変更が予定されている保証および連帯債務は,間接金融において重要な役割を果たしており,金銭債務の弁済・第三者の弁済と理論的関わりが深いことから,本研究課題の関連問題として検討を行った。これらの研究成果は,論文として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では,本年度は,フランスのみを比較検討の対象として研究することとしていたところ,これに加えて,同じくEU決済指令を導入している国としてイギリスについても比較することができた点において,当初の目的を達成した上で,さらに検討の対象を広げることができたものといえる。また,わが国についても,関連する法律問題を検討することができたために,本研究をさらに発展させるための視点を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は,研究の最終年度として,平成25年度および26年度において検討した内容を踏まえて,さらに調査・資料収集を行いながら,それまでの研究成果を論文としてまとめる。その中心課題は,既存の理論に新たな決済手段をどのように取り込むか,どのような立法が必要とされているかということを明らかにすることである。
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