本研究では,民法における弁済の規定を中心に検討した。今日,金銭債務は,法貨(現金)による支払いだけでなく,その他の比較的新しい手段(たとえば,貯金口座振込み(払込み),クレジットカード,電子マネーなど)により弁済されている。しかし,日本民法の弁済の規定は,法貨以外の手段を利用する場合を想定していない。そこで,これらの比較的新しい支払手段をも説明できる,弁済に関する新たな理論が必要となっている。本研究では,国会に提出された民法(債権関係)改正法案を検討して,そこに提案されている口座振込み(払込み)による支払いに関する規定案が十分でなく,さらなる法改正・立法が必要となることを示した。
|