研究課題/領域番号 |
25780079
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
都筑 満雄 南山大学, 法学部, 准教授 (50366986)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 各種契約の一般理論 / フランス契約法の特質 / 非典型契約論 / 混合契約論 / 集団的消費者被害 / 不法行為法 |
研究概要 |
平成25年度は本研究の対象であるフランスの各種契約の一般理論について主として総論的な考察を行い、「フランス契約法における各種契約の一般理論の形成と展開」という論文を完成させた。ここでは、この各種契約の一般理論が論じられる原因として、フランスにおいて細分化特種化された各契約に固有のルールがより重要性を増して一般法が後退していることを、そしてその背景として、各法分野が法典化されることも相まって独立性を強めているなどのフランス法の特質があることを明らかにした。この点はフランス契約法の理解の深化という点で意義を有するものと思われる。あわせていくつかの契約に共通するルールであるこの各種契約の一般理論について、そのあり方を示した。これは、我が国において新種の契約に可能な限り民法のルールで対応するための基礎理論を構築するに当たり、少なからぬ示唆を与えるものである。 この研究を踏まえて書かれたのが、「混合契約論を見る視点」との論文である。ここでは我が国においてもこうした中間理論として所有権移転や他人のための事務処理といった作用についてのルールが見出されうることを示した。これはこうした中間理論を組み合わせて混合契約を規律するという混合契約論の新たな規律のあり方を示すものである。 以上に加えて、各種契約の一般理論は特別法の増殖とその独立化を原因とし、その一例として消費者法の発展が挙げられるところ、これについて、集団的消費者被害を受けての同法の発展に関する「集団的損害」との仏語の報告を、フランスのパリ第二大学他において開催された日仏の民法学者によるシンポジウムである日仏民法セミナ―においておこなった。これはこの問題へ知見を深めるだけでなく、日本法の海外への発信という点でも少なからぬ意義を有するものであると思われる。また同報告を発展させた、「集団的消費者被害の回復と不法行為法」との論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、フランスの各種契約の一般理論について総論的な検討を行い、かつこの議論に広い意味で関連する報告をフランスにおいて行うことを主たる目標としていたところ、すでに前者については、「フランス契約法における各種契約の一般理論の形成と展開」という論文を完成させ、また後者については、「集団的損害」との仏語の報告を行い、かつこれを発展させた、「集団的消費者被害の回復と不法行為法」という論文を公表した。 以上に加えて、次年度の目標はフランスの各種契約の一般理論からの示唆を踏まえた我が国の非典型契約論の新たな構築であるところ、すでに「混合契約論を見る視点」との論文においてこのフランス法を踏まえた日本法の考察を一部行っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、平成25年度に行ったフランスの各種契約の一般理論の総論的な考察を踏まえて、その各論的な考察を行う。具体的には、同議論と深い関連を有し、その主な表れともいえるフランスの請負契約の再編の議論を検討して、具体的にどのような中間理論がありうるのかを明らかにし、これを踏まえて我が国におけるこうした中間理論を明らかにすることを目指す。そしてその成果を論文にまとめ次年度中に公表したい。
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