研究課題/領域番号 |
25780081
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
久保 寛展 福岡大学, 法学部, 教授 (70368984)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 格付 / EU格付機関規則 / 格付に対する信頼 / 格付機関 / 金融危機 / 投資家の保護 |
研究概要 |
金融危機の発生の要因の一つが格付機関による格付であったといわれるため、申請者は、投資者保護の強化のためには不正確または不完全な格付を行った格付機関に対し、投資家が責任を追及できる法的手段の確立も必要であると考えた。そのため、本研究では、どのような要件ならびに法的構成に基づき、格付機関の責任を根拠づけできるのかを解明することを目的に、主として格付機関に対する責任追及に際しての①不正確もしくは不完全な格付と損害との間における因果関係、②格付手法の透明性ならびに格付表明と表現の自由との関係、③格付機関の利益相反の各テーマを扱うこととした。 現在の進捗状況として、EUの格付機関規則を参考に、とくに①および②の研究を進めているところである。とくに2013年のEU格付機関規則では、その35a条において格付機関の責任が明定されており、研究の結果、この法的性質が不法行為責任として構成されていることが判明したことから、当該規則を因果関係や損害の問題を扱うための重要な研究対象として考えている。この問題につき、議論の蓄積があるドイツの文献から示唆を得て、今年度中には論文としてまとめる予定である。また、研究途上において、ドイツでは無批判に格付を信頼した取締役の責任も議論されていることから、この問題についても格付に関連する重要な問題として取り組んでいるところである。当該テーマの研究の結果、現在、一応の目途がつき、取締役の経営判断の原則との関連において論文として成果の公表に向けて執筆に取り組んでいる。 なお、前述したEUの格付機関規則はこれまで3度の改正を受けた結果、その整理が必要であるとの認識から、EUの格付機関規則の改正の経緯にまでさかのぼって研究を継続する必要性を感じているため、その準備も併せて行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は2年間の予定で実施しているが、1年目は文献収集や問題点の抽出に作業を費やした。したがって、1年目は残念ながら本研究の成果の公表にまでいたっておらず、その意味ではやや遅れ気味である。これは、前述のように、2013年のEU格付機関規則35a条において格付機関の責任が導入されたのが最近であることから、現在では当該責任に関して議論の蓄積があるとはいえ、これに関するドイツの各種の主要な論文が最近になって公表されてきたこと、さらに、無批判に格付を信頼した取締役の責任に関するテーマも検出できたことから、同時進行でその研究も行ってきたことに原因がある。しかし、ドイツの議論はすでに精査し、わが国の法制度と比較検討していることから、本年度はその遅れを取り戻すべく、成果の公表に向けて努力することとする。
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今後の研究の推進方策 |
1年目では議論の状況確認やこれに関連する資料に時間を費やしたが、その結果、研究テーマに関してドイツにおいて議論が蓄積されつつあることを確認できた。また、今年3月にドイツのマックス=プランク国際私法・外国私法研究所において研究員との意見交換もできたことから、これらの知見を基礎に、現在、論文としてまとめている最中である。そのため、研究の推進にあたっては、ドイツにおいてどのような議論がなされているのかを常に配慮しつつ、現在進行中である成果をまとめ公表に向けて努力し、今年度中の本研究テーマの一応の完成を試みたい。 もっとも、時間の関係上、研究期間内に取り組むことができるかどうかは、いまだ不明であるが、前述のように、2013年度のEU格付機関規則は3度の改正があることから、その整理の必要性も感じており、時間が許す範囲内でこの問題にも取り組むこととする。
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次年度の研究費の使用計画 |
ドイツへの出張(マックス・プランク国際私法・外国私法研究所)旅費を大幅に節約し、その余剰分を東京での研究会報告のための出張にあてる予定であったが、翌年度に開催されることになったため、その余剰分が未使用額として残った。 未使用額を東京での研究会報告の出張旅費に充当する。
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