研究課題/領域番号 |
25780089
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
荒見 玲子 東京大学, 社会科学研究所, 助教 (20610330)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 要介護認定 / 保育所入所判定 / インタビュー調査 / 第一線職員 / 就学前教育行政 / 介護保険 |
研究概要 |
本研究の目的は、市レベルの自治体を対象に、インタビュー・資料・アンケート調査、公的データの分析を行い、同じ普遍的ケア政策でありながら、福祉的機能が強くプログラムの基準作成が分権的な保育所の入所判定業務と、保険機能が強く基準作成が集権的な要介護認定業務を比較し、次の3点を明らかにすることであった。(1)社会保障の受給資格認定のプログラムデザインが自治体の政策実施の差に与える影響を明らかにする。(2)自治体ごとの政策実施の差から生じるサービスの利用者や受益者の一般的な政治・行政システムへの評価への影響を明らかにする。(3)福祉国家再編期の資源制約の中で自治体での実施という観点から社会保障の資格認定がどのようなシステムで行われるべきか、という問いに資する学問的な知見を提供する。 今年度は、主に以下の3点の作業を行った。第一に、基礎的資料・文献の収集である。福祉政策、地方自治を丁寧にレビューし、介護保険・子ども子育て新システムと両分野とも制度改正が著しいため実務家のための文献・資料などもレビューし、研究の課題を再確認した。また本研究で使用する統計手法やゲーム理論の知識のアップデートを行った。第二に、予備的なヒアリング調査である。要介護認定に関するインタビュー調査の検討・分析と、複数の自治体に子ども行政全般についてインタビュー調査を行い、検討・分析を行った。これらの作業より、特に要介護認定についてはその詳細な実施過程が明らかになり、保育行政との比較の視座を考える上での手がかりとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的を達成するために設定した今年度の研究実施計画は、予想以上に進んだ点と進まなかった点が並存している。平成25年度の研究実施計画は以下の3点であった。 (1)基礎的資料・文献の収集・公的データセット作成:最新の先行研究の整理、概念の整理等を行う。福祉政策、地方自治加えて制度改正が激しい分野のため社会福祉の実務家のための文献・資料など丁寧にレビューする。並行して行う公的な統計によるデータセットの作成をアルバイトの大学院生に協力をお願いし、事後的なチェックを申請者が行う。 (2)予備的なヒアリング調査:予備的なヒアリング調査により、保育所入所判定業務の詳細な実施過程をを把握する。具体的には、待機児童のいる各自治体で入所判定のために使用されている「保育に欠ける度合い」を示す「指数」をどのように決めているのかという点を調べる。 (3)調査票の設計:(2)で行った予備的なヒアリング調査を踏まえ、申請で保育所入所判定業務を経験する保育サービスの利用者(親)が実際にどのような経験をし、その経験をどのように評価するのかを明らかにするために要介護認定の調査をしたときの調査票をもとに、二つのプログラムの違いとその利用者に与える影響の違いを意識しながら調査票を設計する。 (1)は公的統計のデータセットの作成以外はほぼ全て行うことができた。(2)については、予想以上に作業が進展し、平成26年度に行う予定だったインタビュー調査や理論モデルの検討にまでつながった。その結果(3)については、作業を平成26年度に引き続き継続することとなった。この進展状況で次年度も研究が進めば、期待される成果を出すことができると予想できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は以下の3点の作業を予定している。 (1)理論的モデルの検討・基礎的資料・文献・データの再検討平成25年度に行った予備的なヒアリング調査を踏まえ、再度概念の整理、申請者がすでに研究を行った要介護認定業務と保育所の入所判定業務を比較しながら、プログラムデザインの違いと自治体の政策実施の違いの関係、さらにその違いが、資格認定を経験した市民の一般的な政治・行政システムへの評価への影響関係についての モデル構築をゲーム理論等を使いながら行う。 (2)対象自治体への本格的ヒアリング調査及び資料収集:平成26年度は利用者(親)へのスノーボールサンプリングを使った集中的なin-depthのヒアリング・資料調査を行う。待機児童が多くかねてより調査対象に適切だと考えていた名古屋市の大学に移籍したため、調査対象に含める。 (3)アンケート調査の設計・予備調査 平成25年度から継続しているアンケート調査票の設計を完成させ、予備調査まで行う。調査票の配布は各保育所を通じて利用者に配布してもらうことになるため、その窓口となるであろう自治体や保育所とは信頼関係を深められるように接触を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
前倒し支払い請求を行った理由は2点あった。第一に、本年度予算を確保していたインタビュー調査のテープお越しについて、インタビュー調査の依頼が当初の予定より早く進み、研究が進捗したからである。第二に、本年度研究成果の発表の場である学会発表が当初の1回より3回に増え、いずれも地方での開催のため旅費の増額の必要があった。 研究実施計画としては、平成25年度の行う予定であったアンケート調査票の設計と平成26年度のインタビュー調査の一部の作業を入れ替え,インタビュー調査分を前倒し使用を行ったたに過ぎないため、平成26年度以降の使用計画に変更はない。
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