研究課題
本研究の目的は、市レベルの自治体を対象に、インタビュー・資料・アンケート調査、公的データの分析を行い、同じ普遍的ケア政策でありながら、福祉的機能が強くプログラムの基準作成が分権的な保育所の入所判定業務と、保険機能が強く基準作成が集権的な要介護認定業務を比較し、実施のあり方とその政策フィードバック効果を明らかにすることである。最終年度は前年目までに得られたインタビュー調査と個票データの統計分析の研究成果を精査し、まとめることとなった。特に保育の入所判定について3年目に分析した「子ども子育て支援事業計画」の自治体別個票データと、自治体ごとの入所判定表データ分析の結果を論文を作成し、公刊することができた。(1)基準作成が要介護認定に比べて福祉的・分権的な保育所の入所判定は、60自治体の入所判定表の因子分析を行うと、自治体ごとに、一定の求める保護者像・家族像があることが判明した。また、自治体の個票データの分析から、自治体の保育政策への積極性、さらに女性管理職の比率などから測ることのできる、保育政策を実施する行政組織文化のあり方が、保護者、特に母親の労働時間の長さから生じる保育ニーズの表出を促進する場合と和らげる政策フィードバック効果があることを明らかにした。保育ニーズの表明、すなわち、社会保障給付へのclaimingは、政策を通じた一種の政治参加であり政府への評価である。自治体の政策実施のあり方でこうした政治的効果が異なることが明らかになった。これらの成果を国際学会で報告し、海外の研究者からの示唆を反映させ、その後公刊した。研究期間全体の成果として、社会保障給付の受給資格認定という行政活動は人々の線引を行うことにより政治性を強く帯びる。さらに自治体の政策実施のあり方の違い、そして実施を通じた市民への影響は、保育と介護のプログラムデザインによって異なることが示された。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
名古屋大学法政論集(Nagoya University, Journal of Law and Politics)
巻: 269 ページ: 359-398
静岡大学教育研究
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