本研究は、通商港という政治空間を検討対象にすえることで、従来内政面からのみ注目されてきた近代日本における地方利益問題を、内政と外交を貫く課題として捉え直すという全体構想のもと、昭和戦前期の日本海沿岸諸港における地方利益の成立とその実現過程を解明することを目的としている。 本研究の結果、昭和戦前期の通商港をめぐっては、第一に大陸進出が日本海沿岸地域間の競合を激化させたこと、第二に戦時体制の進展が、逓信省を港湾行政に本格的に参入させたこと、第三に工業港修築が本格化したことにより公営および民営港整備が進んだこと、という三点の変化が生じたことが明らかになった。
|