公務では、民間委託の進展や非正規公務員の増加,人事評価制度の導入などにより、労働環境がより民間企業に近いものに変化している。そのなかで、「全体の奉仕者」たる公務員の役割も変化するのか、また、「奉仕」に代わる公務員の新たなモティベーションが生じ得るのかを明らかにするのが、本研究の意義である。以下の、4点について具体的な研究を進めた。 第一に、法的関係の調査から実施した。地方自治体の現場での非正規公務員の実態に関する調査を、文献とインタビューを通じて行い、判例の整理を行った。非正規公務員の増加を受けて、任期付職員法が整備されたが、切り替えた団体、切り替えが難しい団体の状況について実態を調査した。 第二に、人事評価制度の導入実態や課題を調査した。地方公務員法の改正を受けて評価制度の導入が課題となっており、公務員のモティベーション向上に寄与する業績評価、能力評価の事例についてインタビュー調査を行った。 第三に、公務のモティベーションに関するPSM (Public Service Motivation) 研究の文献調査を行った。PSMは、政策決定への関心、公益への貢献、自己犠牲などを尺度に測定され、PSMを涵養する環境、PSMがもたらす具体的な行動特性の研究に発展している。日本の公務員に対してこの研究を進めるための、基礎調査を行い、アンケートの実施を計画した。 第四に、公務員の政治的中立性と「奉仕者」との関係を考察した。近年首長のリーダーシップが強化され、特に幹部公務員について「全体の奉仕者」と相容れにくくなっている。政治主導のもとで公務員の役割をどのように考えるのか、歴史的な考察と国際比較を行った。
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