前年度までに実施したアンケート調査、ヒアリング調査とそれらの分析によって、「民営化」(特殊会社化)された法人の多くには、設置根拠法にもとづく政府関与が残存していること、および、民営化された法人は、その特性に基づいて四つの類型に分類できることなどが明らかになった。 最終年度である今年度においては、これらの研究成果をもとに、民営化された法人の民営化の時期や所管官庁と、四類型との間にいかなる連関や特徴があるのかを明らかにすることに注力して追加的な調査および分析を行った。これらの観点から精査した結果、2000年代より以前に民営化された法人については、将来的な完全民営化を想定・予定している法人が多くみられるのに対して、2000年以降では、法的に完全民営化の実施について拘束がかけられている法人の割合が高まっていることが明らかになった。 また、法人の運営する事業および所管官庁別にみると、鉄道事業を営む特殊会社の経営に対する所管官庁の関与の程度が相対的に低かった。これに対して、公的な投融資を実施する政策金融機関においては、法人間で程度の違いは存在するものの、他の事業を営む法人に比べ、所管官庁の経営への関与が著しく高かった。とくに政策金融機関の中でも事業の性格上、恒常的に赤字を抱えている法人については、民営化以前と比較しても経営に対する政府関与の程度が実質的に変化したとは言い難い状況にあることも明らかになった。以上の通り、事業の性質や民営化後に予見される経営状況によって、あらかじめ政府関与の高低が設定されているとみることができる。 なお、こうした「行政の守備範囲の残存」が民間との連携をともなう政策手法(PPP)においても妥当するかについて追加的な調査も併せて実施し、論文として公刊したところである。
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