研究課題/領域番号 |
25780099
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
根元 邦朗 早稲田大学, 日米研究機構, 助教 (90647025)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 学会発表 / 聞き取り調査 / データ収集 |
研究概要 |
本研究は,日本と韓国の国会で1990年代以降議会内での行動が活発化していることを背景に,(i)どのような目的で議員は立法を積極的に行うようになったのか,(ii)積極的な議員立法を通じて再選や昇進等自己のインセンティブを満たすようなことがあったのかを問うものである.この二つの問いに答えるべく,平成25年度の研究は,日韓の立法活動に関するデータベースの作成,関係者との聞き取り調査,海外での研究発表が主体となった. 日本の国会に関しては,既に衆議院について,全てデータ化を完了している.一方,韓国国会には20年間で20,000件強の議員立法が提出されている.これについて,1988年から2012年までに韓国の国会に存在した議員を対象に,どの議員がどの法案を提出したのかコーディングした. また,立法活動に積極的な与野党の議員,国会の政策立案機関のスタッフ,市民団体とのインタビューを行った.インタビューに際し,上記二つの問いについて詳しく情報を収集した.韓国については,8月に4週間の現地滞在を行い,これまでコンタクトを取ってきた国会議員ならびにそのスタッフとインタビューを行った.日本についても,やはり国会議員と,政務調査会長等の政党のリーダーを中心に聞き取り調査を行った. 以上のデータからは,当初の理論的予測に合致した知見を得ることができた.すなわち,1990年代以降日韓にて政党本位の競争が生まれるにつれ,議員は国会を活用した政策競争に従事するようになった. 平成25年3月にサンディエゴで開催されたアジア学会(AAS)で,日本の予備的分析結果について発表を行った.その結果を踏まえ,上記聞き取り調査の内容と新たなデータを盛り込み,AASでの発表に加筆・修正を行った.この成果を日本内外(9月のアメリカ政治学会(APSA),10月の日本政治学会,3月のアジア学会(AAS))で発表した.また,同内容をオーストラリアに招聘され講演する機会を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の計画はほぼ計画通り行われた. 韓国における立法活動のコーディングは予定通り7月に完了した.また,韓国と日本で合わせて25名ほどの関係者(国会議員,国会・政党のスタッフ,市民団体の代表者等)とインタビューを行うことができた.さらに,韓国においては,選挙制度の法案を提出するという議員室より,選挙制度に関する専門家として,立法の意見交換会に公的に招聘されるなど,非常に貴重な体験を得ることもできた. このデータと聞き取り調査の結果を元に,平成25年度は,3つの学会(APSA,日本政治学会,AAS)にて発表を行うことができた.また,オーストラリアにおいても講演を行う機会があった.各発表において,有益なコメントを得ることができたため,速やかに加筆・修正へ進み,投稿作業へと移行することができると考える.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究として,日韓の立法活動に関するデータベースの作成と関係者との聞き取り調査を継続し,海外での研究発表を行う. 当初は,韓国の議員立法のコーディングを継続する予定であった.具体的には,RAを雇用し,各議員が個々の議案に賛成票・反対票を投じたのかを収集し,議員の反党行動分析に用いる予定であった.だが,韓国におけるインタビューを通じ,「参与連帯」という市民団体において同様のデータを既に収集済みということが分かり,これを利用させてもらえることとなった. 従って,現在保有するデータの拡充と副次的なデータの収集を行う予定である.具体的には,既に日本の衆議院について1979-2012年についてデータの収集が完了しているので,1979年以前のデータの収集と,参議院についてのデータの収集を行う.RAを数名雇用し,夏を目途にデータを完成させる予定である. また,平成26年度6月に韓国で地方選挙が行われるため,これに合わせて2週間ほどの滞在を行う.韓国の地方議員は,日本と同様,国会議員の手足として地域の管理を行う主役であるため,関係者との聞き取り調査から有益な情報が得られるであろう.また,夏季に再度の訪韓を行う. さらに,平成25年度の研究発表を元に,これまで行ってきた関連研究,具体的に,(a)選挙区への訪問と(b)反党行動(議場における造反や離党・脱党等党籍変更)の研究に加筆・修正を加える.これらの主題は立法活動と密接に関わるものであるため,新しく拡張するデータを既存の分析と統合して補助的仮説を検証する.昨年度と同様,日本内外(日本選挙学会(5月),AAS(3月))で発表する.各々英文のジャーナル(特にLegislative Studies Quarterly 誌)へ投稿する.一連の分析を年度末までに1冊の英文の本としてまとめ,国内外の有識者を招聘してAuthor's Conferenceを開催し,そのフィードバックを基に再構成をして本としてプレスへ投稿する.
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