研究課題/領域番号 |
25780102
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
矢内 勇生 早稲田大学, 政治経済学術院, その他 (50580693)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 比較政治学 / 政治制度 / 議会研究 / 立法過程 / 日本政治 |
研究概要 |
本研究は、憲法が上院に強い権限を与えている「強い二院制」を採る議会制民主国家を比較し、分割議会(あるいはねじれ国会)が内閣の立法活動に与える影響を分析することを目的としている。日本では2013年夏の参院選の結果、国会のねじれが解消したが、マスメディア等で取り上げられていたように、ねじれ国会が「決められない政治」の原因だったのだろうか。この疑問に答えるため、議会の分割によってもたらされた立法活動の変化が政権運営に悪影響を及ぼすかどうか、また、どのようなメカニズムで影響が及ぶのかについて検討する。 2013年度は、分割議会における立法過程を分析するためのデータセットの作成を行った。まず、2011年分まで作成済みであった内閣提出法案に関するデータセットを2013年まで利用可能にした。さらに、野党からの対案の使われ方を明らかにするため、議員提出法案までデータを拡張した。これらのデータに加え、法律の重要性を数量的な側面から分析するためのデータを作成した。より具体的には、それぞれの法案が成立時にどれだけ注目されていたかを測定した。このデータは、分割議会と単一議会の間で立法の内容についての違いが見られるかどうか確認するために立法結果としての法律の内容を分析する際に利用するものである。 データの収集と同時に、分割議会が立法活動に影響を与えるメカニズムに関する理論的考察を進めた。分割議会に直面した場合、執政府はどのように行動を変えか、また、分割議会と単一議会ののどのような違いが執政府の行動に変化をもたらすかについて、空間競合モデルや連立理論を用いたモデル化を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の研究は、計画よりやや遅れている。第一に、データセットの作成が少し遅れている。日本の立法データについては予定通り収集することができた。しかし、ドイツとオーストラリアのデータセットの収集、入力が遅れている。主な原因は研究補助者を計画通りに確保できなかったことにある。 第二に、研究対象とする現象を説明する理論の構築が不十分である。理論的な考察から導かれる予測が、これまで収集したデータを使った予備的分析によって支持されないことが少なくない。したがって、2014年度も引き続き理論的な説明を組み立てる作業が必要である。 他方で、計画よりも進んだ部分もある。法律の内容分析は2014年度から開始する予定であったが、2013年度から分析を開始することができた。 以上の理由により、全体としてはやや遅れていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
まず、データセットの作成を終わらせる。日本の立法データは計画通り集まったので、ドイツとオーストラリアのデータを2014年度の早い時期に集める。 その後、作成したデータを用い、分割議会と単一議会の下での立法活動の違いを数量的に明らかにする。また、理論モデルによって提示される仮説を統計的に検証する。 さらに、研究対象国それぞれについて、立法活動の特色や、時系列的な変化を明らかにする。 特に、法案成立率、提出される法案の種類や数、審議時間、各委員会が審議する法案の割合、提出される法案の内容(政府の理想点に近い法案か遠い法案か)などに変化が生じるかどうかを確認する。また、対象国を比較し、各国の分析で見られた特徴を一般的な変数で説明できるかどうかを確認する。たとえば、「上院における与党議員の割合」という変数が、対象国すべての法案成立率の変化を同時に説明できるかどうかを確認する。 最後に、統計分析だけでは特定することが困難な因果関係について考察するため、対象国それぞれの事例研究を行う。たとえば、1975年のオーストラリアの予算否決事例や、日本の参院による問責決議の影響力などを詳細に分析する。イタリアは日本で見られるような分割(ねじれ)状況には陥っていないが、他の3国と同様に強い上院を持っていることから、単一議会の下での立法活動を比較するための参照事例として研究する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究補助者を研究計画通りに雇用できなかったため、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、今年度に使用予定だった研究補助者の雇用費用として使用する。
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