研究課題/領域番号 |
25780105
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研究機関 | 清泉女子大学 |
研究代表者 |
山本 達也 清泉女子大学, 文学部, 准教授 (40509866)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ソーシャルメディア / インターネット / 民主主義 / プライバシー / エネルギー問題 / インテリジェンス |
研究実績の概要 |
3年目(研究期間は4年間)に当たる本年度は、最終的な研究成果を出す上での分析枠組の精緻化を試みるとともに、比較考察のための事例研究を進めていった。これまでの研究においては、主に中東地域を対象としたソーシャルメディアと民主主義の関係性を取り扱い、平成26年度はその対象をアジア地域にも広げるべく台湾での集中的な調査を行ってきた。平成27年度は、もう一つのアジアの事例として、軍事政権下にあるタイを取りあげ、軍政によるソーシャルメディアへのコントロールおよびデモ隊のソーシャルメディア利用に関する調査を行った。 2年目より、本研究を行う上で、国際社会がおかれている環境(対テロ対策が重要課題として上がっているであるとか、エネルギー環境の構造的変化に伴う経済・金融システムへの負の影響など)が、政府によるインターネットへの態度に影響しているのではないかという知見を交えながら、考察を深めてきた。 議論の中心となるのは、表現の自由、言論の自由、プライバシーの保護といった民主主義的な諸価値と、対テロ戦争やサイバー戦争、サイバー攻撃に対処しなくてはならないという国家安全保障とのバランスの中で、インターネット環境がどのように変化し、その変化が一国の民主主義にとってどのような変化を与えうるのかという視点である。 いわゆる「アラブの春」が起こった直後は、ソーシャルメディアを民主化および民主主義という観点にとってプラスの影響を与えるのではないかと期待が集まった時期があったが、近年では、その評価がむしろ逆転しつつある。そんな中で、既存のソーシャルメディアの枠組みを超えた形での新しいサービスを独自に開発し、それを実際の民主主義のシステムの中に組み込もうとする動きも起きはじめており、こうした視点からの研究をする準備を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
選択事例については、2年目に若干の変更をしたものの、3年目に当たる平成27年度は、2年目に行った微修正の方針を踏襲した研究を進めることができており、研究の取りまとめ準備も整いつつあるため。
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今後の研究の推進方策 |
ソーシャルメディアと民主主義という本研究課題の取りまとめにあたって、過去重点的に研究に取り組んできた中東のアラブ諸国を対象とした分析に加え、アジアのケースとして台湾およびタイ、さらにはヨーロッパ諸国(特に財政危機に陥っているとされる南欧諸国)の状況についても比較分析をした上で、全体の取りまとめを行っていく。 最終年度には、調査の積み残しがあるアジア諸国(総統選挙後の台湾および軍政下のタイ)にて追加調査を行いつつ、総合的な知見を導き出したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
スケジュールの関係で、当初予定よりも調査日程の期間が短くなり、その分若干の次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度となる平成28年度には、研究の取りまとめに必要なフィールド調査の積み残し(アジア諸国の事例に関する調査)があるため、繰越金はフィールド調査の旅費として使用する予定である。
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