研究課題/領域番号 |
25780108
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 神奈川県立国際言語文化アカデミア |
研究代表者 |
岡田 健太郎 神奈川県立国際言語文化アカデミア, 講座・研究課, 講師 (50641255)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 討議デモクラシー / 熟議デモクラシー / 市民議会Citizens' Assembly / 市民の政治参加 / カナダ王立委員会 / 市民運動 / 討議民主主義 / 熟議民主主義 |
研究概要 |
本研究の目的は、カナダのブリティッシュ・コロンビア州選挙制度改革市民議会(Citizens’Assembly)を研究上の出発点・手がかりとして、カナダ政治における討議デモクラシー的な複数の場(制度)を再発見し、それらを討議デモクラシー理論の観点から再構成することにある。 研究初年度である平成25年度は、当初の予定通り、市民議会以前からカナダ政治で活用されてきた政治制度、具体的には王立委員会(RoyalCommssions)における市民参加の枠組みを討議デモクラシー論的な観点から検討・再評価することを目的として研究活動に従事した。特に市民の政治参加の制度化という点で、王立委員会がそれぞれの時代や状況に応じて、代議制デモクラシーを補完する「複数回路のデモクラシー」の一部を構成し、立法府とは異なる、あるいは立法府を補完する討議の場を形成していたことを明らかにすることを目指して、王立委員会制度と市民議会制度との連続性を意識した研究を行った。 今年度研究の対象としたのは、トーマス・バージャー(Thomas R. Berger)BC州最高裁長官(当時)をコミッショナーとして設置されたマッケンジー・バレー・パイプライン建設に関する王立委員会における公聴会の位置づけである。マッケンジー・バレー・パイプラインとは、1960年代のオイルショック直後、アラスカの豊富な石油資源をカナダ経由のパイプラインでアメリカ本土に輸送することを目指した計画であり、時のピエール・トルドー自由党政権は、ジャン・クレチェン北方開発・先住民問題担当大臣に命じて、この王立委員会を設置した。その際採用された市民参加の枠組みは、その後のカナダにおける王立委員会等、議会外における市民の政治参加の枠組みに大きな影響を与えたと考えられ、その点について実証的に論じることを目指して、調査で入手した史・資料分析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は予定通り12月前半にカナダで現地調査を行い、資料収集や関係者へのインタビューを行った。また調査で得た資料をもとに、日本カナダ学会関東部会研究会で報告を行った。平成26年度には、学会報告の申請が受理され報告する予定であり、ほぼ研究計画通り、おおむね順調に進展している。 本報告書冒頭で述べたとおり、本年度の研究の中心は、カナダのマッケンジー・バレー・パイプライン建設に関する王立委員会における市民の政治参加構造について、史・資料調査を軸に分析することにあった。調査・研究の結果、先行研究では論じられていない問題などを明確化することができた。研究会報告での質疑応答も踏まえて、今後は、このテーマについて早期に論文として発表することを目指す。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのところ、本研究を申請した際に提出した研究計画通りに研究が進展していることもあり、今後もこのペースで研究を進めていきたい。平成26年度以降は、BC州市民議会のあとに実施されたオンタリオ州選挙制度改革市民議会や、他州での王立委員会制度を用いた選挙制度改革について考察し、カナダにおける政策形成の場での市民参加の契機について研究を進める。 その際、討議/熟議デモクラシー理論・実践とシチズンシップ論、シチズンシップ教育論との関係に留意しつつ、研究を進めていくこととしたい。政治学や政治そのものにとって、政治的リテラシー教育、シチズンシップ教育が、重要な課題・分野であることは言うまでもないが、本研究では特に、討議/熟議デモクラシー理論やその実践と市民性・シチズンシップ性との関係についても考察を深めたいと考えている。つまり、討議や熟議の担い手である市民を、討議・熟議デモクラシー理論はどのような存在ととらえているのか、この点について留意しつつ、さらに考えを深めていくことを念頭に置いて、本研究を進めていく。これは、カナダにおいて討議/熟議デモクラシーの実践に実際に参加した人々へのインタビューを重ねているうちに、政治参加する市民の政治リテラシー・シチズンシップ性というものを考える契機がたびたびあったためである。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度中に購入予定であった研究関連書籍(洋書)の発注を翌年度に回したため、次年度繰越金が生じている。また海外調査に際して使用しなかった人件費・その他の分もある。これらの繰越金は次年度以降に効率的に使用する。 前年度予定していた研究機材、研究関連書籍(洋書・和書)等の購入に使用する。
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