研究課題/領域番号 |
25780110
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
松村 史紀 宇都宮大学, 国際学部, 准教授 (80409573)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 中ソ関係 / 中ソ同盟 / 中ソ友好同盟相互援助条約 / 中ソ分業 / 東アジア国際政治史 / 東アジア冷戦 / 世界労連 |
研究実績の概要 |
【目的】本年度は、中ソ同盟の三層構造分析のうちの第二層を研究した。具体的には、世界革命を中ソが分担しあい、アジアの問題については北京がその主要な責任を負うという「中ソの分業体制」について、その実態を史的実証することを目的とした。 【内容】中ソの分業体制は少なくとも次の三点で未熟なものであり、ソ連が求めた通りの体制を整備できなかったというのが実情に近い。①新中国の建国前夜、中国共産党は「向ソ一辺倒」政策を固めたため、ソ連を脇へおいて北京が革命の司令塔になるという構想を全面的に受け入れることに抵抗があった。実際、北京は重要な問題についてはモスクワの指示や関与を求め続けた。②革命運動の支援には秘密工作が不可欠となるため、分業を公式の制度として整備することは難しかった。③中国共産党とアジア地域の各共産主義政党との連絡関係には濃淡があったばかりか、各地の革命運動には大きな差異があったため、北京が一律にアジアの問題を担当できるだけの素地が乏しかった。 【意義】従来の研究では、ソ連の分業「案」をそのまま「実態」として記述したり、中国共産党が分業を引き受けるさいの制約条件を軽視したまま、中ソ分業体制が成立していたかのように論じていたが、本研究ではその実態がなぜ、どのように未熟なものに終始したのかを論じた。 【重要性】①日本を含めたアジア地域のなかで、中ソ分業の実態を再考できた。②日本において蓄積の少ない中ソ関係史の分野で基礎研究を提供するものである。③アジア政経学会東日本大会において、中ソ関係史の分科会を企画し、その基礎研究を発表する場を設けた。 【研究活動の内容】①海外(北京市、上海市)のワークショップで二回研究報告した。②アジア政経学会で二回研究報告した。③上海市にある華東師範大学で資料の情報を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の理由により、研究計画が当初の予定に沿って進展していると判断する。 第一に、当初の目標通り、中ソ分業の実態についての研究を進め、研究発表することができた。 第二に、昨年度に華東師範大学で得た基礎資料群(1950年以降の中ソ関係史関連資料)やその他資料を今年度も活用することができた。 第三に、以上の研究成果を学術論文としてすでに発表済みあるいは発表予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、これまで集積した中ソ関係史の基礎資料群を中心にしながら、特に以下の各点に留意して研究を推進する予定である。 ①中ソ同盟の三層構造分析のうちの第三層として、同盟内の南北関係について研究を進める。 ②具体的には次のような論点に関して研究をする。a.なぜ、どのようにソ連が中国革命をアジア革命のモデルとするよう望んだか。b.中国共産党がどのようにそれに応じたか。c.朝鮮戦争後、中国は第三世界諸国の独立を保証する「平和五原則」を提起し、その後台湾海峡危機を引き起こすが、これが中ソ関係においてどのような意味をもっていたのか。 ③今年度と同様に、スターリン文書等広くネットで公開された史料も視野に入れて調査したい。 ④華東師範大学で現在整理されている中ソ分業関連資料についての情報収集にも努めたい。
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