研究課題/領域番号 |
25780115
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研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
村上 尚子 津田塾大学, 付置研究所, 研究員 (80624882)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 国際関係学 / 朝鮮現代史 / 国連 |
研究実績の概要 |
2014年度は、主に以下の2点の研究項目について研究・調査を実施した。 1.昨年度末に実施した米公文書館NARAでの資料調査で収集した資料の分析を行なった。その資料は、1947年9月の第2回国連総会に朝鮮独立問題が上程された時点前後から第3回国連総会で朝鮮問題に対する決議が採択された時期までの米国連代表周辺の資料が主である。その間の国連朝鮮臨時委員会(UNTCOK)の活動に関する国連代表の資料も含まれている。当該問題に対する米国の対応について先行研究が利用してきた資料は、米国務省の資料であり、それらはすでに『大韓民國史資料集38-42』および『『韓國現代史資料集成43-44』(国史編纂委員会、韓国、1998-1999年)として刊行されている。先行研究が利用しなかった国連代表に関する資料を分析したことにより、朝鮮独立問題に対する米国務省内の議論の経過や各国の国連代表との交渉過程を詳細にあとづけることができた。 2.上記の研究結果に基づいて、米公文書館NARAでの追加資料調査と国連での資料調査が必要であると判断し、今年度末(2015年3月)に実施した。 NARAでの調査は昨年度の調査で狩猟しきれなかった資料を収集する補完的な調査だった。また、国連ではUNTCOKの内部資料を収集した。朝鮮独立問題に関する国連の対応やUNTCOKの活動について、先行研究で利用してきた資料は主に国連が刊行した報告書であり、それらは活動内容が要約されたものであったため、この度の調査でその要約の元になっている内部文書を集約的に収集した。詳細な分析を現在進行中だが、UNTCOKの活動実態や内部の議論が具体的に明らかになることが期待される。UNTCOKが朝鮮内の政治状況や民衆の要求をどのように理解していたのかを知るための貴重な手がかりとなる資料を得られたことも成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書においては、2014年度の研究計画として米国での史料収集・分析を前期に終了させ、夏以降、オーストラリアとカナダの朝鮮独立問題に対する政策を調査する予定になっていたが、進行状況がやや遅れている。その理由は以下の2点である。 1.昨年度に米国での資料調査を実施した結果、想定していた以上に関連資料が多数あり、その収集と分析に時間を要した。確認したところ、それらの資料は先行研究で利用されていない資料であり、米国の当該問題に対する政策を研究するうえでは、その収集・分析は欠かせない作業であった。 2.研究を進行するなかで、先行研究では利用されていない国連の内部資料が国連アーカイブスに所蔵されていることが判明した。したがって、オーストラリアとカナダの個別調査に入る前に、それらの資料を収集し、分析する必要があったため、国連アーカイブスでの資料調査を優先することにした。その理由として、オーストラリアとカナダが国連朝鮮臨時委員会(UNTCOK)内で展開した議論を調査する土台として、UNTCOKの活動全体をまず把握することが不可欠であると考えたためである。国連アーカイブスでの調査はすべて終了し、現在その分析を進行中であり、その作業が終了次第、オーストラリアとカナダに対する調査に移行する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度の研究成果を受けて、引き続き、本研究の第一主題である「国連朝鮮臨時委員会参加国の朝鮮独立問題に対する政策」に関する研究を進める。研究目的の達成度がやや遅れている状況をふまえて、研究計画の見直しを行った。 今年度の研究推進方法は以下の通りである。(1)前期:昨年度に国連アーカイブスで収集した資料の整理と分析を終了し次第、オーストラリアの朝鮮政策に関する調査の準備を開始する。9月初めにオーストラリア戦争記念館での資料調査を実施する。外務省の資料、主に当時の国連代表とUNTCOK国連代表S.H.ジャクソンらの資料を中心に収集する。(2)後期:オーストラリアで収集した資料の整理と分析を進める。その作業を終了後、カナダの朝鮮政策に関する調査の準備を開始し、2月にカナダの国立図書館・公文書館(LAC)での資料調査を実施する。帰国後、収集してきた資料の整理と分析をする。 2016年度(最終年度)の研究計画は以下の通りである。(1)前期:本研究の第二主題である「第二次大戦後の委任統治領や植民地に対する国連の対応」について研究を開始する。この研究については当初の計画では、2つの事例を研究する予定であったが、昨年度までに国連アーカイブスやNARAでの資料調査した際に予備的に関連資料の状況を確認した結果、資料が広範囲に亘ることを確認したため、研究計画を見直し、1つの事例に関する研究に変更する。やや遅れている研究の進度も回復できると考えている。史料は国連大学ライブラリーを中心に収集する。(2)後期:引き続き前期の研究を遂行し、とりまとめを行う。これまでの分析結果について他の研究者の意見を求めるため、応募者が参加する研究会、学会で積極的に成果の公表を進める。それらを冬以降の最終的な取りまとめの段階に活かして、本研究の集大成として投稿論文の執筆を行い、研究成果の公表を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2013年度、2014年度の調査の結果、米国の関連資料が想定していた以上に関連資料が多数あり、その収集と分析に時間を要したこと、また国連アーカイブスに重要な関連資料が所蔵されていることが分かり、2014年度の調査対象地を変更したことにより、出張費等の未使用分が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究の進度に合わせて研究計画を見直し、次年度にオーストラリアとカナダでの資料調査を実施するため、次年度使用額は主にその出張費用として使用する計画である。
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