研究課題/領域番号 |
25780115
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研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
村上 尚子 津田塾大学, 付置研究所, 研究員 (80624882)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 国際関係学 / 朝鮮現代史 / 国連 |
研究実績の概要 |
2015年度は、主に以下の2点の研究項目について研究・調査を実施した。 1.2013~2014年度に実施した米公文書館NARAおよび国連アーカイブスでの調査で収集した資料の一部を分析し、ワーキングペーパー「国連による南朝鮮単独選挙の監視決定過程に対する米国務省の政策と対応」(津田塾大学国際関係研究所『IICS Monograph Series』No.27, 2015年)としてその研究成果を発表した。同論文では、米国が朝鮮独立問題を国連に上程したことで、より多くの国が同問題に関わることになり、米国務省が当初予期していなかった展開に対して、国連監視下の南朝鮮単独選挙を実現するために様々な対処を講じながら、外交を展開していく過程を明らかにした。 2. 8月にオーストラリア国立公文書館、3月にカナダ国立図書館・文書館(LAC)で資料調査を実施した。国連朝鮮臨時委員会(UNTCOK)の一員だったオーストラリアとカナダの朝鮮独立統一問題に対する政策とその決定過程を明らかにするため、未刊のデジタル化されていない(web上で閲覧できない)資料を閲覧し撮影した。オーストラリアでは外務省資料のなかから朝鮮問題に関する資料を網羅的に閲覧した。LACではカナダ外務省の文書群であるRG25のなかから、同問題に関連する資料を閲覧・撮影した。また当時のMackenzie King首相の関連資料を入手した。(カナダの資料については公開可否審査の結果が今回の調査期間中に間に合わず閲覧できなかったものがあり、次回の調査時に閲覧・撮影することにしたい。)現在これらの資料について分析を進めており、今後、上記1の研究成果と総合して分析することで、朝鮮独立問題に対する各国の政策やその背後にある思惑を明らかにし、同問題を東アジアの新たな国際秩序における諸国家・諸地域の重層的な関係性のなかで捉えることができるだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2013年度に米公文書館と国連アーカイブスに未刊の資料を多数確認したために、それらの調査を2014年度に優先して実施したことから、2015年度の研究開始にあたって、交付申請書に記載した同年度以降の研究計画を一部見直した。その計画においては、おおむね順調に進展している。カナダLACでの資料調査を予定していた2月ではなく3月に実施したため、カナダLACで収集してきた資料の分析は来年度にも継続する。また、LACにて公開可否審査の結果が今回の調査に間に合わなかった資料については来年度に収集する。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度の研究成果を受けて、引き続き、「国連朝鮮臨時委員会参加国の朝鮮独立問題に対する政策」に関する研究を進める。研究の進捗状況をふまえて、次年度(最終年度)の研究計画を以下のように見直した。 (1)前期:昨年度末にカナダLACで収集した資料の分析を引き続き行う。そのうえで、アメリカおよびオーストラリアの政策に関するこれまでの分析と総合して分析を進め、とりまとめる。前年度に収集が完了しなかった資料は補足調査を実施し収集する。(2)後期:これまでの分析結果について他の研究者の意見を求めるため、応募者が参加する研究会、学会で積極的に成果の公表を進める。それらを冬以降の最終的なとりまとめの段階に活かして、本研究の集大成として投稿論文の執筆を行い、研究成果の公表を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に予定していた調査を、研究計画の見直しにより当該年度に実施することに変更したことから、特に年度末3月の調査の旅費を確保しておくことを優先し(初めての調査地であったため旅費の見積もりに余裕を持たせたこともあり)、特に物品費の使用について当該助成金からの支出を控えたため、最終的に未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は主に、当該年度に実施した調査で収集することができなかった資料を次年度に収集するために使用する計画である。
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