最終年度の前半は2015年度(2016年3月)に実施したカナダ国立図書館・文書館(LAC)調査で収集したカナダ外務省の資料を分析した。同資料には、カナダの国連臨時朝鮮委員会 (UNTCOK)メンバー入りを推進したピアソン副外相のメモランダムや、UNTCOKカナダ代表としてソウルに派遣されたG.S.パターソン外交官の報告書などが含まれ、カナダ外務省や内閣における朝鮮独立問題に対する議論の内容や経過を詳細に把握することができた。 最終年度の後半は、2015年度のカナダ調査で閲覧できなかった資料を再びLACを訪れて入手した(2016年9月)。二度の調査で収集したカナダ外務省の資料と、本研究で2015年度までに収集してきた米国務省の資料および米軍の資料を主に用いて、UNTCOKの一員だったカナダの朝鮮独立問題に対する立場と、それに米国の対朝鮮政策がどのような影響を与えたのかを分析した。その研究成果を、年度末に朝鮮史研究会関西部会2017年3月例会で「第二次大戦後の朝鮮独立問題とカナダ」(2017年3月25日、大阪河合塾セルスタ3回会議室)というテーマで報告した。米国による朝鮮独立問題の国連上程の動きを知ったカナダ外務省が、国連総会での議論に備えて同問題に関する研究を開始して以降、カナダがUNTCOK構成国に選出されて、その一員として活動を始めるまでのカナダ内閣内の議論や米国務省との交渉過程を跡づけた。また、「国連総会決議に即して全朝鮮における選挙実施と政府樹立」を目指すべきだというカナダ政府の主張は、国連中間委員会の結論を受けてUNTCOKが単独選挙の監視を決定した後も一貫しており、このような朝鮮独立問題に対するカナダの独自的なポジションの根拠を検討した。同報告に対して研究会で得られた意見を参考にし、これまでの研究成果と総合して、朝鮮独立問題をめぐる国際関係の解明につなげていく。
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