研究課題/領域番号 |
25780121
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
足立 研幾 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (70361300)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 規範 / 規範の消滅 / 変容し続ける規範 / 非国家主体 / セキュリティ・ガバナンス |
研究実績の概要 |
平成27年度については、核兵器の非人道性をめぐる議論において大きな動きがみられたこともあり、当初予定していた潜水艦攻撃禁止規範の誕生から消滅プロセスの事例研究は、文献によるものにとどめ、各種研究会に加えて、関係官僚等との意見交換や、参加者限定の会合等に参加して、核兵器をめぐる議論の進捗について情報収集を行った。こうした近年の核兵器をめぐる動きも取り込んで、規範の誕生から消滅に関する議論の精緻化を進めた。 International Studies Association等の学会で報告を行ってきた内容を、英語論文にまとめたことは、そうした成果の一つである。本論文については、Norm Antipreneurs: The Politics of Resistance to Global Normative Changeというタイトルで2016年夏にRoutledgeから出版される書籍に収録される。また、昨年出版した単著書籍に対するコメントを踏まえて、理論面でさらに精緻化を進めた議論については、「毒禁止規範から化学兵器禁止規範へ―『変容し続ける規範』という分析視角による事例研究」という単著論文を『グローバルガバナンス』誌に発表した。 加えて、特に安全保障分野に絞ってみた場合に、規範の定着、維持、変容に際して、いかに国家と非国家主体が協働やあるいは競合しているのかという点に注目した、セキュリティ・ガバナンス研究を進めた。こちらについては、各国・地域研究者と協力し合いながら、理論的検討を進めた。『立命館大学人文社会科学研究所紀要』に、私自身が編集担当としてまとめた「セキュリティ・ガバナンスの新地平」と題した特集号は、その成果であり、私自身は巻頭論文を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
規範の消滅をめぐる議論については、潜水艦攻撃禁止規範に関する調査分析がやや遅れているが、その一方で、核兵器の非人道性をめぐる議論の歴史的経緯、および近年の変容について深い調査を行うことができた。安全保障上きわめて重要な核をめぐる規範について理論的検討を進めることができていることは大きな成果である。また、セキュリティ・ガバナンス研究も、地域研究の専門家等と連携することで、早くも紀要特集号に成果を発表するなど成果を上げており、全体としては順調に研究が進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
ほぼ研究計画通りに研究を進めていきたいが、核兵器をめぐる議論の進捗状況をにらみつつ、その内容を盛り込んだ理論の精緻化ができるようにしたい。元々の計画の中ではそれほど大きな比重を占めていなかったセキュリティ・ガバナンスという概念の精緻化についても、その重要性・有用性が高いことが明らかになり、また地域研究者との連携によって成果もあげられそうなので、予定よりもやや重視して、研究を進めていきたい。 こうした研究を進めつつ、今年度は、この間の研究をまとめ上げていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通り執行され、2016年度に繰り越したのは2万円弱である。最終年度である2016年は予算額もやや少ない一方、核兵器の非人道性をめぐる動向に動きが見られそうなこともあり、当初予定していなかった調査、出張を行う可能性もある。そのため、一回程度の調査出張が増加しても対応できるよう、若干額を2016年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度についても、引き続き研究動向の整理をおこない、理論的な精緻化に努める。規範の消滅や拡散失敗に関する研究のみならず、そうした研究を行う中で深まってきたセキュリティ・ガバナンスについても研究を進めていく。また、学会や研究会等で、そうした研究成果に対するフィードバックを得つつ、研究をまとめあげる作業を行っていきたい。
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