研究課題/領域番号 |
25780128
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
国本 隆 一橋大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (40612271)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | full implementation / universal type space / robustness / transfers |
研究実績の概要 |
私の論文(Implementation with Transfers)では,プレイヤー間での金銭移転が可能な環境におけるメカニズム・デザイン問題を考察した.売手と買手との契約関係や様々なオークションなどでは金銭移転は必須であることを考えると,非常に多くの経済問題が,この論文の射程範囲に入る.メカニズム・デザインの目的は,どのような資源配分ルールがメカニズムによって遂行可能かを明らかにすることである.例えば,効率的な資源配分を達成したいのであれば,各プレイヤーの選好に関する私的情報を彼ら自身から報告してもらわなければならない.もちろん,自身の利益に適うなら,各プレイヤーは虚偽の報告も積極的に行うであろう.このとき重要となる条件は誘因両立性である.もし他のすべてのプレイヤーが正直に私的情報を報告しているならば,各プレイヤーも正直に私的情報を提供することが最適戦略となるとき,その資源配分ルールは誘因両立性を持つという.この誘因両立性は遂行可能性のための必要条件であることは明らかである.さらに,それが十分条件であることも本研究は示した.すなわち,もしプレイヤー間での事後的な金銭的移転をほんの少しだけ許すと,誘因両立性を満たす「どのような」資源配分ルールも遂行可能である.この研究で提案されたメカニズムは,情報構造にほんのわずかの摂動を加えても,メカニズムの性能は維持されるという情報頑健性をもつ.特に,完備情報に焦点を当てると,弱支配されないナッシュ均衡(Undominated Nash Equilibrium)に基づいた遂行可能性の特徴づけも本研究の結果のコロラリーとして得られる.さらに,ほんの少しの金銭的移転は依然として必要ではあるが,均衡経路上では,金銭的移転は全く必要としない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書で提案した二つのプロジェクト(Robust Virtual Implementation及びUndominated Nash Implementation)に関して,研究論文を完成させることができたから.
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今後の研究の推進方策 |
完成させた二つの研究論文を国際査読雑誌に掲載するため,学会発表及び論文の改訂を行う.これに加えて,論文改訂のための有益なフィードバックを頂くために,積極的に海外の大学を訪問し,現地の研究科者とのディスカッションも行う予定である.特に,Robust Virtual Implementationに対応する論文は大幅な改訂をすでに必要としているので,十分時間をとり,改訂作業にとりかかる.その後,改訂版を学会等で発表できるように努力する.
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究遂行のため,アメリカ出張をする予定であったが,それが実施できなかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
8月以降より,学会・セミナーでの研究報告を行うため,海外出張を考えている.加えて,共同研究者(主に海外)を訪問し,研究に関するディスカッションを行うことを考えている.
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