研究概要 |
本研究の目的は、経済成長における産業の役割を明示的にモデル化し、産業の興隆や衰退が経済の変動に与える影響を分析することである。特に、平成25年度は複数部門からなる最適経済成長モデルに産業構造の変化を導入することを目的として研究を進めた。 具体的にどのように産業の構造変化を導入するかが重要な検討課題で一つである。まずは最も単純なレオンチェフ型生産関数を持つ資本を生産する部門と消費財を生産する部門からなる2部門経済成長モデルを想定し、産業の資本集約度を表す生産関数のパラメータの外生的な変化を産業構造の変化と捉えることとした。そして、資本集約度の変化がその後の最適な資源配分をあらわす最適経路にどのような変化を与えるかについて分析を試みた。資本財部門を労働集約的な部門とし、消費財部門を資本集約的な部門とした時、他のパラメータを一定のもとでは資本集約度に大きく差がある場合は安定的な経路となるが差が小さくなるにつれてよりサイクルが起こるなどより複雑な経路となることが明らかとなった。 次の課題としては産業の資本集約度の変化がモデルの中で内生的に生じるケースについて考察することである。また、現在考えているモデルでは各産業が一つの企業のみで構成されており、この点に関しても複数の異質な企業が存在するケースへと拡張を加えること必要である。 本年度は、これらのモデルの拡張を行うために、関連する既存研究のサーベイも行った。特に、Klette and Kortum (2004, Journal of Political Economy)では、産業内に生産性の異なる複数の企業が存在し、それらの企業の産業内における分布が時間を通じてどのように変化するかを産業の成長と捉えていた。このように、より現実に近い産業構造の変化と動学的な資源の再配分についても考察を進めている。
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