研究実績の概要 |
本研究の目的は、経済成長における産業の役割を明示的にモデル化し、産業の興隆や衰退が経済の変動に与える影響を考察することである。昨年度に引き続き、平成26年度も複数部門からなる最適経済成長モデルに産業構造の変化を導入することを目的として研究を進めた。 簡単なケースとして、産業の違いを資本集約度(労働1単位あたりの資本量)で表し、複数の産業が存在し、それぞれの資本集約度が時間を通じて一定の場合における最適経路について分析した。その結果、資本集約度の外生的な変化(産業構造の変化)によって、産業間の相対的な資本集約度が変化し、最適経路が安定的になる場合、サイクルが起こる場合など、最適経路が複雑になることが明らかになった。また資本集約度に大きく差がある場合は最適経路は安定的となり、差が小さくなるにつれて、最適経路がより複雑になる可能性があることが分かった。これらの結果については、現在論文としてまとめているところである。産業の資本集約度がモデルの中で内生的に決まるケースについても考察を進めている。 これまで考察してきたモデルでは、暗に1つの産業内には同質の企業が多数存在している、もしくは1つの産業が1つの企業のみからなることを仮定してきた。しかし現実の経済を考えると、複数の異質な企業が存在するケースへの拡張が必須であり、この点については既存研究(Klette and Kortum(2004, Journal of Political Economy), Melitz(2003, Econometrica))を参考にしながら産業内で生産性の異なる企業が存在する場合についても拡張を進めている。
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