本研究は、時間を通じて資源配分が繰り返されるような状況下における取引メカニズムを、ゲーム理論の枠組みを用いて分析・設計するものである。特に、参加者が一定期間財を配分され続けて初めて価値が出るような強い補完性のある環境で、参加者が自身の私的情報を正直に表明するための必要十分条件(誘因両立性条件)の特徴づけ、動学的に効率的な資源配分を達成するメカニズムの設計、および売り手の期待収入を最大化するメカニズムの設計を考察した。 本研究の主要な成果として、経済主体がランダムに1度だけメカニズムに参加し、売り手と長期契約を結ぶモデルにおける、入札者の誘因両立性条件の特徴づけ、および効率的・収入最大化メカニズムの導出を行った論文”A Dynamic Mechanism Design for Scheduling with Different Use Lengths”を執筆し、経済学分野の主要国際学会であるthe Econometric Societyの地域大会や産業経済学の国際学会であるEARIEなどで成果を報告した。本論文は国際的な学術雑誌掲載に向けた投稿準備中である。 平成28年度は上記の研究に強く関連した問題として、入札参加者が高々1度だけ財を消費する環境において、繰り返し(逐次)オークションが均衡においてどのような結果をもたらすかについて分析した。その中で、村本顕理氏(駒澤大学)との共同研究結果として、効率的な財配分が実現し且つ取引価格が徐々に下落するような均衡が存在するための必要十分条件を、財の異質性の観点から特徴づけた。この成果は”Sequential auctions of heterogeneous objects”としてEconomics Letters誌に掲載された。
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