研究課題
本研究では、プリンシパルとエージェントの間に情報の非対称性が存在する状況において、表明原理に基づく議論を補完する基礎理論の確立とその応用に関する考察を行った。エージェントの効用関数が準線形である場合における、主要な研究結果は以下の通りである。第一に、私的情報に依存する留保利得によって制約される参加条件の下で、エージェントの最適行動を示す決定ルールが私的情報に関して弱単調的であるような任意の誘因整合的な直接表明メカニズムから、間接メカニズムとしての非線形価格関数を構築することが可能であることを明らかにした。複数のタイプのエージェントが同一の意思決定を行っている状況(bunching)の可能性を排除することなく、課税原理が成立することが示された。第二に、本研究で提示した手法の経済学的意味を吟味した結果、ラムゼイ問題を分析した先行研究である、 Goldman、Leland and Sibley (1984) によって議論された手法と密接な関係にあることが明らかとなった。彼らは限界価格関数を導出したのに対して、非線形価格関数そのものを導出する、本研究の手法の優位性を明らかにした。第三に、直接表明メカニズムから構築された間接メカニズムが、現実に観察されるように、公共料金等に用いられるブロック料金制となるための必要十分条件を明らかにした。具体的な直接表明メカニズムとエージェントの準線形効用関数が与えられれば、この必要十分条件が満たされるかどうかを調べることは容易である。一方、エージェントの効用関数が準線形ではなく、Roberts (1979)が用いたような、所得効果を伴う特定の効用関数のクラスでも同様に、私的情報に関して弱単調的であるような決定ルールを伴う、誘因整合的な直接表明メカニズムから間接メカニズムとしての非線形価格関数を構築することが可能であることを明らかにした。
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Meisei University, Disucussion Paper Series
巻: No. 32 ページ: 1-14
巻: No. 33 ページ: 1-8