研究実績の概要 |
2013年度研究ではオークション環境における非介入性の要請(=第1価格オークションが満たす要請)と耐戦略性の要請(=第2価格オークションが満たす要請)の間のトレードオフ関係を明らかにしたが、2014年度は(オークション環境に限らない一般的な状況下で)非介入性と耐戦略性を同時に要請することが持つ含意に関する研究成果を刊行することができた。プレイヤー個人が他者の利得を操作できないことを要請するのが非介入性であるのに対して、同じ条件をプレイヤー集団に対して拡張した要請として長方形性(rectangular property; Saijo, et.al. (2007) Theoretical Economics)がある。この長方形性と耐戦略性を同時に要請することが、ゲーム理論における「共通知識」の仮定に対する均衡帰結の頑強性の要請であるロバスト遂行可能性と同値になることを明らかにした(Adachi (2014a) Games and Economic Behaviors)。よって、長方形性と耐戦略性を同時に満たしていないルールは必ず、プレイヤー間で互いのタイプに対する何らかの知識が共有できていることを仮定しなければゲーム理論的に望ましい結果が実現できることを保証できない。 またその他の研究成果として、専門的知識を独占している専門家集団が審議によって社会的に正しい評価基準を導くにはどのような運営ルールが導入されるべきかについての研究(Adachi (2014b) Games and Economic Behaviors)、および世代間公平性についての評価基準の合理性についての研究(Adachi, et. al. (2014) Mathematical Social Science)について研究成果を刊行できた。
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