研究実績の概要 |
2013年度はオークション問題でルールに対して非介入性(non-bossiness, “自身の結果を変えないままに他の主体の厚生に影響を与える個人的行為をルール上で許容しないこと”)を要請することの帰結を近郷匠氏(福岡大学)との共同研究で分析し、非介入性を要請した場合は第1価格オークションが、非介入性の代わりに耐戦略性 (strategy-proof) を要請した場合は第2価格オークションが公理化されるという要請間のトレードオフ関係を明らかにした。 2014年度は問題をオークションに限らない一般的な社会的選択環境に拡張し、 “社会的選択ルールのゲーム理論的な均衡がプレイヤー間の「共通知識」の仮定に依存せず社会的に望ましい結果を実現できること”の要請であるロバスト遂行可能性が、耐戦略性と(非介入性を集団的行為に拡張した要請である)長方形性の2つを同時に要請することと論理的に同値であることを明らかにすることで、一般的な環境における耐戦略性と非介入性の情報的性質を明らかにした。 2015年度はオークション問題と密接な関係を持つマッチング問題における耐戦略性の研究を近郷匠氏と行った。この問題では安定性を弱めることで非介入性については要請を満たすマッチングルールが存在するようになるが、耐戦略性については同様に安定性を弱めても要請を満たすルールが存在しないことが知られていた (Kongo, 2013)。そこで多数性 (Gardenfors, 1975) という従来とは異なる方法を用いて安定性を弱めることで耐戦略性を満たすルールが生じる可能性を検討したが、それでも耐戦略性を満たすルールは存在しないという結果が得られた。 また本年度のその他の研究成果として、公刊論文の被引用数に基づいた研究者の業績評価ルールの公理化を検討した(同じく近郷匠氏との共同研究)。
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