研究実績の概要 |
1. 社会的選択規則の虚偽申告防止性能については「個人の選好が少し変化したときに社会的選択は変わらないか,少ししか変化しない」という公理(bounded response)を手掛かりに以下のような成果を得た:(i) 社会的選択として選択対象を順序づける場合には,bounded responseを満たしながら虚偽申告防止性能を有することと,「無関連対象からの独立性」との関係を明らかにした(Sato, 2015, Social Choice and Welfare).(ii) 社会的選択として1つの選択対象を選ぶ場合には,「耐戦略性」というよく知られた虚偽申告防止性能の定式化が(individual)bounded responseと簡単な2つの条件に分解できることを示し,最多得票性を特徴づけた(Muto and Sato, Social Choice and Welfare, 掲載決定済み).(iii) このようにその重要性が明らかになったbounded responseは,それと「効率性」を満たすものが独裁制しかないことも示した(Muto and Sato, Journal of Mathematical Economics, 掲載決定済み).
2. 社会的選択の情報的基礎に関する研究の成果として,ある意味で望ましい規則の中で最も少ない情報量で遂行できるのは,決選投票を伴う最多得票制であることを示した(Sato, 2016, Mathematical Social Sciences).
3. 虚偽申告防止性能と情報的基礎の両方に関わる研究について,最近注目されている枠組みであるpreference-approvalモデルを考えた.Preference-approvalモデルにおいては各個人は選択対象の順序のみではなく「許容可能」か「許容不可能」という評価も持つ.伝統的なモデルよりも豊富な情報を含むので,「虚偽申告によって社会的選択が許容不可能なものから許容可能なものに変化するときのみ,虚偽申告が行われる」といった条件を定式化できる.この条件に基づいた虚偽申告防止性能を定式化し,不可能性・可能性の両方の結果を得た(Erdamar, Sanver, and Sato, 2016, 学術誌にて査読中).
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