トレンズは、リカードウの諸理論を批判することもあったが、それらを受容し、自らの経済理論を提起していた。しかし彼のリカードウ解釈は、時おりその本来の意味からかけ離れていた。トレンズの言説は、J.S.ミルや20世紀の著名な経済学者たちの注目を集めたため、そのことがひとつの契機となり、誤ったリカードウ解釈が流布してきた可能性がある。とりわけ、国際経済学の教科書で「リカードモデル」として知られる比較優位の原理はリカードウ本人によって提示されたものであるとの誤った解釈の普及には、トレンズが間接的にかかわっていたと考えられる。
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