研究課題/領域番号 |
25780150
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
末石 直也 京都大学, 経済学研究科(研究院), 講師 (40596251)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | モーメント不等式 / 経験尤度 |
研究概要 |
近年、計量経済学において、興味のあるパラメータを点識別することができない部分識別モデル (partially identified model) の統計的推測方法に関する研究が盛んに行われている。本研究では、部分識別モデルのひとつのクラスであるモーメント不等式モデルのためのベイズ推定の方法を考察した。モーメント不等式モデルはセミパラメトリックなモデルのため、明示的な尤度関数を必要とするベイズの手法を直接的に適用することはできない。そのため、既存研究の多くは頻度論に基づくもので、ベイジアンの研究は限定的である。しかし、ベイズには、尤度とパラメータの事前分布さえ設定することが可能であれば、パラメータが識別されるかいなかにかかわらず、常に推定が可能であるという利点がある(Poirier, 1998)。そこで、モーメント不等式モデルから導かれる経験尤度を代替的な尤度として用いてベイズ推定を行うことを提案した。 本研究ではまず、経験尤度を尤度として用いることの理論的な妥当性について検証した。既存研究により、経験尤度とパラメトリックな尤度の間には多くの類似点が存在することが示されているが、それだけでは有限標本における推定の正当性を保証するものではない。そこで、Ragusa (2007) に倣い、ある特定の事前分布の下で、経験尤度は周辺尤度と見做すことが可能であることを示した。 次に、シミュレーションにより、事後分布の性質を分析した。シミュレーションの結果、事後密度関数は識別集合の外ではサンプルサイズの増加とともに急速に0に近づいていくことが確認された。これは頻度論的な意味で、識別集合の一致推定が可能であることを示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は概ね当初の研究計画どおりに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
26年度は以下の2点について考察を行う予定である。 まず、25年度においてシミュレーションによって確認された結果を理論的に示し、提案されたベイズ推定量は頻度論的な意味において一致推定量であることを証明する。 次に、本研究によって得られるベイズの信用区間 (credible interval) と頻度論的な信頼区間 (confidence interval) との関係について検証する。Moon and Schorfheide (2012) は、パラメトリックな部分識別モデルにおいて、漸近的に信用区間は信頼区間に含まれることを、つまり、信用区間は信頼区間より狭くなることを示している。同様の結果がセミパラメトリックなモーメント不等式モデルにおいても得られるかどうかを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度中に予定していた研究打ち合わせをキャンセルしたのと、英文校正に出す予定の論文の執筆が年度末までに間に合わなかったために繰り越しが生じた。 研究打ち合わせの出張旅費と英文校正費に充てる。
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