今年度は、これまで行った理論の結果をさらに弱い条件のもとで示すことができたことと、また開発した手法を使用した実証分析を行ったことが、主な実績である。 理論については、前年度までに得られた結果では、平均や自己共分散あるいは自己相関の分布の推定の際には、横断面での標本サイズよりも時系列の長さの方が大きいという条件が必要であった。今年度行った研究により、時系列の長さの方が小さい場合でも分布の推定と推定量の漸近分布の導出が行う事ができた。所得のパネルデータなどの、いわゆるミクロパネルデータでは、時系列の長さの方が横断面での標本サイズよりも小さいことが通常であるため、この研究成果により開発した手法の応用範囲が広がった。 また、開発した手法を用いて所得動学と生産性動学に関する実証分析を行った。これらの動学構造には個人あるいは企業間での異質性が認められた。また所得の高い人ほど所得へのショックは小さいといった知見を得ることができた。 これらの研究成果を、数々の学会や大学の研究セミナーなどで発表し、また研究成果をまとめた論文を学術雑誌に投稿した。
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