研究課題/領域番号 |
25780152
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 賢悟 東京大学, 経済学研究科(研究院), 講師 (50549780)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 計量経済学 / ノンパラメトリック操作変数モデル / ベイズ推定 |
研究概要 |
本年度はノンパラメトリック操作変数モデルに対する擬ベイズ推定の漸近的な性質を詳細に調べた論文をまとめた。ノンパラメトリック操作変数モデルは古典的な線形操作変数モデルのノンパラメトリック版であり、近年計量経済学の文献で関心をもたれているモデルである。具体的には、条件付平均制約から誘導される擬尤度を考えて、構造関数に事前分布を入れる。事前分布としては、級数(series)事前分布(sieve事前分布とも呼ばれる)を考える。すなわち、構造関数を(適当な基底関数系に関して)一般化フーリエ展開し、その係数に事前分布を入れる。一般化フーリエ展開の打ち切りレベルはdeterministicに決めて、標本数とともに増えていく設定を考える。すなわち、パラメータの次元が標本数とともに増えていくベイズ統計モデルを考えていると言える。このとき、擬事後分布のシャープな縮退レート、Bernstein von-Misesタイプの結果、および事後平均で定義される擬ベイズ推定量のシャープな収束レートを達成するための事前分布の(抽象的な)条件を導出し、また事前分布の具体的な例をいくつか与えた。本論文はAnnals of Statisticsにアクセプトされ、すでに同雑誌に掲載されている。論文では、多変量への拡張、外生変数がある場合への拡張なども考察している。一般化フーリエ展開の打ち切りレベルの選択、およびその数値実験による比較は今後の課題とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した本年度の大体の研究目的を達成し、最終的に数理統計学のトップジャーナルであるAnnals of Statisticsに論文が掲載されたので、研究は順調に進んでいるといえる。ただし、打ち切りレベルの選択法とその数値実験による比較は次年度に持ち越しとした。
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今後の研究の推進方策 |
ノンパラメトリック操作変数分位点回帰モデルのベイズ推定に関する研究をすすめる。ノンパラメトリック操作変数分位点回帰モデルは、構造関数の推定が非適切な(ill-posed)な非線形逆問題となるので、推定が難しい。既存の推定法は、不連続な目的関数の高次元最適化が必要となるので、実行が難しい。この数値的な難点をベイズ推定を使うことで克服できると考える。同モデルの解析は、Chen and Pouzo (Econometrica, 2012)が行っているが、彼らの正則条件は抽象的であるので、より明快な条件を考察し、ベイズ推定の漸近理論を構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
家庭の事情で海外出張が一件キャンセルになったため。 差引額はそれほど大きな額ではないので、交付請求書に記述した年次計画に大きな変更なく研究を進めていく。
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