研究実績の概要 |
ノンパラメトリック操作変数モデルに対するベイズ推定に関して、理論的な研究を進めた。具体的には、Y、X、Wをそれぞれ、目的変数、内生変数、操作変数としたとき、Y=g(X)+U, E[U|W]=0なるモデルをノンパラメトリック操作変数モデルと呼ぶ。このとき、ある種の擬尤度を考えると、構造関数gのベイズ推定を実行することができる。本研究課題は、このようにして得られた擬事後分布のシャープな縮退レート、および、事後平均によって定義される構造関数のベイズ推定量のシャープな収束レートを導出した(より正確には、そのようなシャープなレートを達成するための事前分布の条件を導出した)。内生変数が多変量であるケースや、外生変数があるケースへの拡張も考察した。以上の結果をまとめた論文は、Annals of Statisticsに掲載された。次に、上記の結果の、ノンパラメトリック操作変数分位点回帰(NPIV-QR)モデルへの拡張を考察した。このモデルは、\tau \in (0,1)を固定したとき、Y=g(X)+U, P(U \leq 0 | W)=\tauと記述される。既存のNPIV-QRモデルの推定方法は、不連続な目的関数の高次元最適化を要するため、数値的に不安的であり、原理的に最適化を要しないベイズ推定はこのモデルに対してとくに適していると思われる。NPIV-QRモデルに関しては、期間中に論文をまとめることはできなかったが、継続して研究を進めていく予定である。
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