研究課題/領域番号 |
25780153
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
早川 和彦 広島大学, 社会(科)学研究科, 准教授 (00508161)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 計量経済学 / パネルデータ |
研究実績の概要 |
本年度は主に3つの論文の執筆に従事した。 1つ目は南カリフォルニア大学教授Hashem Pesaran氏との共同論文である" Robust Standard Errors in Transformed Likelihood Estimation of Dynamic Panel Data Models with Cross-Sectional Heteroskedasticity"である。この論文では動学的パネルモデルにおける最尤推定量の性質を考察し、クロスセクションの不均一分散がある場合でも機能する標準誤差を提案した。 2つ目は関西学院大学助教永田修一氏との共同論文である" On the Behavior of the GMM Estimator in Persistent Dynamic Panel Data Models with Unrestricted Initial Conditions"である。この論文では動学的パネルモデルにおいて、データの従属性が強いときのGMM推定量の振る舞いを理論的に考察した。 3つ目は" Alternative Over-Identifying Restriction Test in GMM with Grouped Moment Conditions" である。この論文では、従来の過剰識別制約検定における検定のサイズのゆがみの問題を解決するために、新しい検定統計量を提案した。シミュレーション結果からは、新しい方法のパフォーマンスは従来の方法よりも著しく良いことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は本プロジェクトの核となる理論的分析が予定通り進み、論文を再投稿した。 一方で、それに付随した新たな問題の発見もあった。その問題については次年度の研究テーマとの関連しており、さらなる分析が必要となることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は2つのテーマを分析する予定である。1つはGMM推定量における過剰識別制約の検定の改善であり、もう1つは構造方程式モデリングにおける定式化検定の改善である。 1つ目のテーマについては、通常の過剰識別制約検定の検定統計量に対して、カイ2乗分布の自由度とサンプルサイズを考慮した有限標本修正を提案し、それがどの程度機能するのかをシミュレーションで確認する予定である。 2つ目の構造方程式モデリングの研究についてであるが、構造方程式モデリングは、従来、心理学や社会学の実証研究で頻繁に使われているアプローチであるが、実は同一のアプローチが計量経済学でも使われており、それぞれ独立に研究が行われてきている。そして、定式化検定の検定のゆがみの問題が心理学・社会学の文献でも計量経済学の文献でも指摘されている。本研究ではその検定のゆがみを是正する方法を考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初参加する予定であった学会に参加しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度利用しなかった分は今年度の旅費や物品の購入に当てる予定である。
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