研究課題/領域番号 |
25780155
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大山 睦 北海道大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (20598825)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 生産性 / 企業結合 |
研究概要 |
本研究の1つの目的は企業結合が買収企業と被買収企業の生産性に与える影響を実証分析し、そのメカニズムを明らかにする事である。この目的を達成する為に日本の綿糸紡績産業の歴史的データを収集し、データの電子化を行った。より具体的には、紙媒体で保存されていた様々なデータを電子化し、事業所レベルの1つのデータベースを作成した。このデータベースの完成により、厳密な実証分析が可能になり、以下の知見を得た。既存研究では、生産性の高い企業が生産性の低い企業を買収すると考えられており、生産性を高める能力が買収後の被買収企業の生産性向上に寄与していると考えられていた。一方、本研究では、企業結合前には買収企業と被買収企業の間では生産性に大きな差異は観察されないが、買収企業の利益率が被買収企業の利益率を上回る事が明らかになった。また、買収後には被買収企業の利益率と生産性の両方が改善される事もデータによって示された。この事は生産性を高める能力だけでなく、利益率を高める能力も企業結合のプロセスとその後の企業活動に影響を与えている事を示唆している。利益率を高める要因として経営能力に着目し、更なる分析を行った。その結果、在庫管理や販売網整備などの需要要因を管理できる能力は生産性の改善に寄与するという知見を得た。企業が様々な企業活動を行っている事を考慮すると、希少な生産資源が生産性の向上だけでなく、他の活動にも使われており、企業はそれらの活動間でトレードオフに直面していることが推察される。経営能力が生産資源の有効利用を促す事をデータで示した事に本研究の意義があると考えられる。労働や資本などの生産要素の飛躍的な拡大が期待できない我が国にとっては、いかに生産性を向上させるかは重要な政策課題である。企業結合を通しての生産資源の再配分が生産性向上に寄与する可能性を示している本研究は政策的に重要な示唆を含んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の到達目標はデータベースの完成と簡単な計量モデルによる基礎的な実証分析を行う事であった。データベースは実証分析を行うのに必要な質を備え、詳細な実証分析を行える完成度であった。また、実証分析では基本統計から分析を始め、より厳密な計量経済学の手法を用いた分析も行う事ができた。既存の研究では明らかにされなかった企業結合のプロセスとその影響をデータを使って詳細に検証する事ができた。それらの検証により、新たな知見を得て、その知見を体系的に説明する為のメカニズムを考察するために時間を費やす事ができた。このような考察に時間を費やす事は当初の予定に含まれておらず、計画以上に進展している事を示している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、研究実施計画にしたがって研究を遂行する予定である。具体的には、計量経済モデルを用いて構造推定を行い、厳密な実証分析を行う。実証分析で得られた新たな知見を踏まえて、その体系化に努力する。企業結合のプロセスを明らかにするとともに、政策的な示唆も包括的に検討する。論文執筆に本格的に取り組むと同時に、国際学会や国内学会で研究成果の報告を積極的に行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
海外に滞在する研究協力者との研究打合せが当初の予定より少なかった為、次年度使用額が生じました。 国際学会発表や国内学会発表の旅費に使用する予定であります。
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