平成27年度は、26年度途中に見つかったモデルの問題点をまず解決した。その問題点とは、二国の非熟練賃金が同一で1とする仮定が、二国が対称的なケースにしか使えないことが分かった点である。そこで、二国が対称的で両国の非熟練賃金が同一で1と仮定するケースと、二国が非対称的で両国の非熟練賃金が必ずしも同一とは限らないケースに分けて分析することにした。 この問題解決後、論文の仮完成に至った。その仮完成版を海外の学会で発表したり、本論文の研究分野に精通した海外の研究者を訪問して、フィードバックをいただいた。そのフィードバックを元に最後の修正・推敲を繰り返し、論文の完成に至った。 本研究の第一の付加価値は、従来の研究では見落とされていた、競争政策(参入政策と反トラスト政策)と賃金格差の国際的な連結を試みたことである。技術変化や国際貿易が賃金格差の変化の要因であることは広く認識されてきた。一方、競争政策は、賃金格差の変化の要因としては、その可能性を示唆する経験的観察があるにもかかわらず、注意が払われてこなかった。しかし、Kurokawa (2010) は、閉鎖経済の枠組み内で参入政策を賃金格差に結び付けた。こうした流れの中で、本研究は、閉鎖経済だけでなく開放経済の枠組みでも、参入・反トラスト両政策を賃金格差に結び付けた。 第二の付加価値は、従来の研究が企業規模の変化の源として技術の変化を強調してきたのに対して、本研究はその代替として参入及び反トラスト政策という二つの政策の変化を強調している点である。Kurokawa (2010) は、技術変化に加えて、参入緩和政策による参入固定費用の低下が企業規模の縮小と企業数の増加を招く点に着目した。こうした流れの中で、本研究は、同一フレームワーク内で、参入緩和政策と反トラスト政策の双方が企業規模と企業数の変化を招く点に着目した。
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