研究課題/領域番号 |
25780159
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
北野 泰樹 一橋大学, 大学院商学研究科, 特任准教授 (70553444)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 政策評価 / 環境政策 / 買替行動 / 構造推定 / 自動車市場 |
研究概要 |
平成25年度は,自動車市場における環境政策の評価として,平成21年に導入された環境優良車に対する補助金施策(いわゆる,エコカー補助金)の分析を,非関税障壁に係る貿易摩擦の問題に着目しつつまとめた.本成果は,経済産業研究所のディスカッションペーパーとして発表されている.本論文は,シンガポールで開催されたAsian Meeting of the Econometric Society,福岡大学で開催された日本国際経済学会春季大会を含め,多数の研究会で報告し,討論,コメントを踏まえた改訂を進めている.改訂版では,補助金対象決定のための燃費基準,補助金額に注目し,それらをさまざまな値に変更させたケースについて,カウンターファクチュアルシミュレーションにより均衡を導出し,費用効果分析の観点から効率的な政策について考察している.新たな分析結果についても,東京大学で開催されたOEIO Conferenceにおいて報告を行った. 加えて,本研究課題の主要な目的である買替行動を考慮した消費者行動モデルの構築と推定に向けて,自動車検査登録情報協会の「初年度登録年別自動車車両数統計」,自動車技術会の「自動車諸元表」からデータベース作成のための作業を進めた.また,経済産業省より本研究課題のため,過去に乗っていた自動車の特性と補助金を受けて購入した自動車のモデル名(型式情報)を含む補助金申請者の個票データの提供を受けているので,それらデータの整理も併せて進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データベースの作成に際し,一部データベース化が困難な資料があり,当初予定よりも進捗が遅れているが,別途データを追加することで解決できることがわかっているため,概ね順調に研究が進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では,当初想定していたよりも豊富なデータを得ることができているため,それに基づいて分析方法等を再検討している.特に補助金申請者についての個票データが利用可能なので,集計データと合わせた分析を行うためのデータベースの作成を引き続き行い,それに基づいた構造推定モデルを作成する.また,データベースに関しては,当初利用を予定していた自動車技術会による「自動車諸元表-検索版-」からのデータ抽出に手間がかかることが判明しているため,同会が販売するローデータ版を購入する. その他,平成26年度の計画は以下のとおりである. (1)分析・論文執筆…買替行動分析のための実証モデルを構築する.具体的には,近年実証産業組織論の分野で発展を遂げている動学的な消費者の意思決定を伴う消費者行動モデルをベースとしたモデルの定式化を行う.さらに,分析のためのプログラムを完成させ,平成25年度から作成を続けているデータベースを用いて推定を行う.推定結果をもとにカウンターファクチュアルシミュレーションを行い,環境政策の効果を明らかとする.以上の分析結果をもとに論文執筆を行う. (2)学会参加・報告…研究報告と,最新の研究テーマや分析手法の調査のため,日本経済学会の春季大会および秋季大会等,国内外の学会に参加する.加えて,産業組織研究会(東京大学社会科学研究所),ポリシーモデリングワークショップ(政策研究大学院大学),イノベーションフォーラム(一橋大学)などの研究会においても引き続き,参加・報告を行う.これらの参加・報告を通じて,研究成果を宣伝するとともに,議論を通じて論文の改善に努める. (3)論文の投稿…平成26年度までの成果をもとに,論文投稿を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初はRA等を雇って資料からデータの抽出作業を依頼する予定であったが,一部データベース化が困難であることが判明したため,RAは雇用せずに追加でデータの購入することとした.購入予定のデータは自動車技術会の「自動車諸元表-データ処理版-」で,平成25年度の残額を超える費用がかかるため,平成26年度に繰り越した上でまとめて購入する. 自動車技術会の「自動車諸元表-データ処理版-(乗用車・エンジン編,全緒元項目版)」の平成21年度分を購入する予定である.
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