当該年度の研究では,主にこれまで行ってきた研究成果をまとめ,学会で報告し,その一部を雑誌に掲載することを目指した。まず,垂直的市場において川下企業が川上市場に対して価格支配力を有するモデルの構築を行い,それを”Successive Oligopoly with Pricing Power in Upstream Market”と題する論文にまとめ,2015年5月に国士舘大学で行われた日本経済政策学会第72回全国大会において報告した。学会後は,研究計画にあるように垂直統合の問題や在庫管理の問題をこのモデルに取り入れることを目指した。複数層市場のモデルへ拡張することは可能だと分かったが,研究期間が終了した時点で,これらの問題をモデルに取り入れるには,さらなる研究が必要であることが分かった。今後は,モデルの簡素化を進め,当初の問題を取り入れたうえで,研究成果を学術雑誌に発表したいと考えている。また,複数層市場のモデルを構築する試行錯誤の中で得られた研究成果を「複数層から構成される市場における垂直統合の効果」と題する論文にまとめ,学術雑誌である『国民経済雑誌』の2016年1月号に掲載した。この研究では,垂直統合が外生的に扱われており,今後の研究としてはそれを内生化することおよび,2期間のモデルに発展させ,在庫の問題を取り入れることが必要となる。今後の予定としては,この研究を進めることにより,一定程度の成果が得られた時点で,それらをまとめ学術雑誌で発表したいと考えている。
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