研究実績の概要 |
理論と実証の両面から研究を行うとともに、最終年度にあたり総括と今後の研究の方向性と課題を明らかにした。①昨年度研究途中だったCole et al.(2015, RIETI DP)を仕上げた。東日本大震災における防災対策と支援の効果を企業レベルで推計し、防災対策(特に事前の企業間連携協定や輸送網の確保)や援助(特に地域金融機関による援助)は有意に震災からの復興を早める。企業による防災対策や援助協定が減災に役立ち、政府や自治体による後押しも公共政策上重要であることが分かった。また、地域金融が災害復興で重要であることから、災害よりも包括的に日本の地域における様々な負のショックと地域金融との関係や地域経済への長期的・歴史的影響などをHoffmann教授(チューリッヒ大学経済学部)と共同研究を着実に進めている。②Bernard and Okubo(2015, RIETI DP)では製品レベルでの生産体制を分析した。経済的な負のショックにより製品生産をスイッチする(生産停止、新規開始)ことが分かった。特にサンクコストの大きい製品ほど、ショックの際にスイッチしやすいことが分かった。自然災害によるショックが製品生産の体制を変える可能性がある。③Rehdanz et al. (2015, JEBO)では人々の幸福度が東日本大震災前後で地域的に大きく異なり、原発からの距離が幸福度に対して有意に負の影響を持つことが分かった。④震災後、廃棄物の問題が深刻になることが予想されることから、Okubo et al.(2016, AEP)では日本の廃棄物輸出の現状を分析し、結果、waste haven(廃棄物の規制回避)の様相を呈していることが明らかになった。⑤前年度に引き続き、理論面ではForslid and Okubo(2015, RIE)やIto and Okubo(2016, Manch Sch)では企業の異質性を考慮した新しい貿易理論を提示しつつ実証した。またForslid and Okubo (2016, mimeo)では企業の異質性を考慮した新しい空間経済理論を構築しつつ長期歴史統計を用いた実証も行った。
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