研究実績の概要 |
平成26年度には、主に三つの研究実績を得た。(1)排出権市場政策が施行された場合に、排出権の配分方法の違い(オークション方式、恒久的配分方式、閉鎖条項付配分方式、産出量比例型(OBA型)配分方式)によって産業内・産業間の企業生産性や市場の均衡価格がどのような影響を受けるのかという疑問に関して、Melitz(Econometrica, 2003) の動学的一般均衡モデルをベースにした理論モデルを構築し解析を行った。研究結果は、一橋大学経済制度研究センターのワーキングペーパーとして刊行され、更に、Journal of the Association of Environmental and Resource Economists (JAERE) にも受理され正式に登載される運びとなった。(2)地球温暖化対策に向けた近年の国際的アーキテクチャは、CDMや二国間クレジット等の不完全な排出権取引市場と国内の環境税や排出権取引とが多国間で並存する様相を示している。この様な国際的環境政策群の影響を整合的に分析する為に、財市場と排出権市場双方に国際貿易が存在し、各市場均衡が同時的に決定されるようなモデルへと拡張を行った。排出権供給における国際間の非協力的な競合(Copeland and Taylor, AER, 1995)という要素を盛り込む事で、各国の汚染排出量を内生化する事に成功している。これらの研究結果を纏めた論文は、平成27年度中にワーキングペーパーとして刊行したいと考えている。(3)本研究課題の派生的研究として、日本のエコカー減税・補助金が新車需要およびCO2排出量に与えた政策効果に関する実証分析を平成25年度にスタートさせたが、平成26年度には研究結果を論文に纏め、東京経済研究センターのワーキングペーパーとして刊行した。
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