研究課題/領域番号 |
25780177
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 西南学院大学 |
研究代表者 |
加藤 眞理子 西南学院大学, 経済学部, 准教授 (30613228)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | インド / 移住 / 送金 / 労働市場 / 社会階層 / エンパワーメント / 人口移動 / 経済成長 |
研究概要 |
経済成長局面においては、経済後進地域から、所得獲得機会の多い先進地域への移住圧力が高まるが、インドでは、社会階層的制約が強く機能するために、移住の期待便益が低い上、移住コストが多額になるため、社会・経済的後進階層においては、モビリティは制限されるというのが従来の見解であった。 しかし、インドが2桁近い成長を達成した2000年代においては、従来では移住することが不可能であった経済・社会的にもっとも後進的な層(被差別階層)が新たな経済的機会を獲得したことが拡大したことが明らかになり(加藤:2012)、貧困線以下人口の減少報告がなされていた点などから、この時期におけるインドの経済成長によって、社会・経済的後進階層がエンパワーメントを賦与されたという一定の合理的な根拠が得られたといえよう。 一方で、2010年代に入ると、貧困線はきわめて高い水準に設定されていたため、貧困問題は実質的に解決されていないのではないか、という疑義が指摘され、政治・社会的な大問題が生じた。さらに、経済成長率は年率5%程度にまで鈍化し、景気の減速局面にある一方で、インフレ率は経済成長率を上回っていることから、社会・経済的後進階層の相対的な窮乏化が進行している可能性がある。 本研究は、このような経済環境下における社会・経済的な後進階層に対する経済的な機会の変動への検討を行うことを目的としている。研究初年度において、2000年代におけるインドにおける経済構造の変化に対する検討を行った結果、経済成長によって、社会的な所属階層にもとづく相対的な価値下落が社会的な後進層において生じている可能性が提示された。特に、後進的な制約に直面する女性の労働市場におけるプレゼンスが大幅に減退しているだけでなく、人口数においても減少傾向がみられた点は重要であると考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インドの景気変動、および社会の構造変化について包括的に検討したことによって、今後における詳細なデータ分析へ移行するための基礎的研究を行うことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
インドにおいて、都市部偏重であり、労働力の増加を相当に多くは見込めない経済政策が変化していないことから、社会階層にもとづく不平等化プロセスはさらに進行していく可能性がある。したがって、階層ごとに受ける経済的便益や移住・送金の不平等化に対する検討を行う必要が大きい。また、都市部への人口移動過程において、社会的要因によって経済的価値がもともと低く、経済的価値が相対的に減価していると見込まれるのは社会階層だけでなく、女性も同様である。したがって、このように社会で後進的な立場におかれている社会階層のみならず、女性の経済・社会的状況の変化をより明確化する必要が生じる。こうした点について、インドの最新の家計調査データを用いた研究を行い、現地における聞き取り調査も同時に行うことで、研究を推進する。
|