研究課題/領域番号 |
25780182
|
研究機関 | 政策研究大学院大学 |
研究代表者 |
塚田 尚稔 政策研究大学院大学, 政策研究科, 准教授 (70599084)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 特許 / 研究開発 / 引用 / 中国 / PATSTAT |
研究実績の概要 |
欧州特許庁のPATSTAT、PATSTAT Legal Statusデータベースを主に利用して、日本、米国、ドイツなどの先進国、並びに中国、台湾、韓国などの東アジア諸国に居住する研究者によって発明され米国特許商標庁にも出願された特許に注目して、国際比較をしつつ、国際共同発明の頻度とパフォーマンスについて分析を行った。自国の人的資源を補うためにも、特に科学技術知識の重要性が高い先端的な研究分野において国際共同発明の重要性が高く、国際共同発明から生まれた特許は被引用件数で測った意味での質は高い傾向にある。また中国の発明者が関わる国際共同発明は外国企業による所有、または外国企業と中国国内企業の共同所有になっている比率が高いことが明らかになった。 この分析は、この分野での先行研究と同様に、特許の発明者の居住国情報を用いて、二つ以上の国の発明者によって生み出された発明を「国際共同発明」と定義して分析を行っている。この定義では外国に居住する自国人との共同発明を国際共同発明に分類してしまう(逆に自国に居住する外国人との共同発明を国内共同発明に分類してしまう)ため、国際共同発明の実態と効果を正確に把握することが難しい。そこで、PCT出願の書誌情報から居住国情報だけでなく国籍情報も取得して、日本等の先進国、及び中国を含む東アジアの諸国の国際共同発明の実態と被引用件数等で測った意味での特許の質に与える影響について、より詳細な分析を試みている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中国、並びに東アジア諸国、及び日本・米国等の先進国における発明に関して、米国特許商標庁にも出願された特許に注目してその登録状況、被引用件数で測った意味での特許の質、国際共同発明の頻度と特許の質に与える効果に関する分析について研究を進めた。2014年度中に国際カンファレンスで報告を行い、国際共同発明の決定要因を中心としてまとめた部分は査読付き専門誌に投稿して、既に掲載された。 また、上記の国際共同発明に関するテーマをより深めるために、本研究計画作成後に公表された海外研究者による分析も参考にしつつ、発明者の居住国情報だけでなく国籍情報を用いた分析にも取り組んでいる。リーガルステータス情報を用いた分析のためのデータセットも作成中である。
|
今後の研究の推進方策 |
できるだけ最新の動向を把握するために平成27年度も欧州特許庁のPATSTAT、PATSTAT Legal Statusデータベースの最新版は購入する。それとともに、日本特許のより詳細な引用情報や経過情報等を取得するためのデータベースの購入も平成27年度早期に検討する。平成26年度にも取り組んだ中国を含む東アジア、並びに日本・米国等の先進国における国際共同発明の実態と効果についての特許単位の研究は引き続き分析を行う。居住国と国籍のデータを用いることで、各国の研究開発における外国人材の活用による効果をより詳細に把握することが可能になると考えられる。また、審査請求の有無や権利の維持状況等のリーガルステータス情報を用いた分析にも取り組む。 各種研究会等で研究の報告を行い、識者の意見を求めることで研究の質を高めて、専門誌への投稿と掲載を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、欧州特許庁PATSTATデータベース2014年版を購入しなくても利用できる状況であったためにPATSTAT Legal Statusデータベース2014年版のみの購入で済んだこと。PATSTATのデータ収録状況が改善されていることにより、平成26年度に行った作業範囲では中国特許庁のデータベースを利用せずに済んだために購入しなかったこと。また、国際カンファレンスが日本で開催されたため、外国出張旅費の負担がなかったことによる。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成26年度までの分析は主に米国にも出願された特許に注目して米国特許の引用情報を用いた分析に注力してきたが、PATSTATには収録されていない日本特許に関するより詳細情報に関するデータベースを購入することで分析を拡大できる可能性があるため、平成27年度は、日本特許に関するデータベースの購入に充てることも検討している(人工生命研究所の研究者用特許データベース等)。
|